最前列の真ん中に、魔ま法ほう大だい臣じんコーネリウス・ファッジが座っていた。ファッジはでっぷりとした体つきで、ライムのような黄き緑みどり色いろの山やま高たか帽ぼうを被かぶっていることが多かったが、今日は帽子なしだった。その上、これまでハリーに話しかけるときに見せた、寛容かんような笑顔えがおも消えていた。ファッジの左手に、白髪はくはつを短く切った、鰓えらのがっちり張った魔女が座っている。掛けている片かたメガネが、近寄りがたい雰ふん囲い気きを醸かもし出していた。ファッジの右手も魔女だったが、ぐっと後ろに身を引いて腰掛けているので、顔が陰かげになっていた。
「よろしい」ファッジが言った。「被ひ告こく人にんが出しゅっ廷ていした――やっと。――始めよう。準備はいいか」ファッジが列の端に向かって呼びかけた。
「はい、閣下かっか」意い気き込ごんだ声が聞こえた。ハリーの知っている声だ。ロンの兄のパーシーが前列の一番端に座っていた。ハリーは、パーシーがハリーを知っている素そ振ぶりを少しでも見せることを期待したが、何もなかった。角縁つのぶちメガネの奥で、パーシーの目はしっかりと羊よう皮ひ紙しを見つめ、手には羽は根ねペンを構かまえていた。
「懲ちょう戒かい尋じん問もん、八月十二日開廷かいてい」ファッジが朗々ろうろうと言った。パーシーがすぐさま記録きろくを取り出した。「未み成せい年ねん魔法使いの妥当だとうな制限せいげんに関する法令ほうれいと国こく際さい機き密みつ保ほ持じ法ほうの違い反はん事じ件けん。被ひ告こく人にん、ハリー・ジェームズ・ポッター。住所、サレー州、リトル・ウィンジング、プリベット通り四番地」
「尋じん問もん官かん、コーネリウス・オズワルド・ファッジ魔ま法ほう大だい臣じん、アメリア・スーザン・ボーンズ魔法法ほう執しっ行こう部ぶ部ぶ長ちょう、ドローレス・ジェーン・アンブリッジ上じょう級きゅう次じ官かん。法ほう廷てい書しょ記き、パーシー・イグネイシャス・ウィーズリー――」
「被告側がわ証しょう人にん、アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドア」ハリーの背後で静かな声がした。ハリーがあまりに急に振り向いたので、首がグキッと捻ねじれた。
濃紺のうこんのゆったりと長いローブを着たダンブルドアが、この上なく静かな表情で、部屋の向こうから粛しゅく々しゅくと大股おおまたに歩んできた。ダンブルドアはハリーの横まで来ると、折れ曲がった鼻の中ほどに掛かけている半月はんげつメガネを通して、ファッジを見上げた。長い銀色の鬚ひげと髪かみが、松明たいまつに煌きらめいている。