「どんなに驚くべき魔法かどうかは、この際問題ではない」ファッジはイライラ声で言った。
「むしろ、この者は、あからさまにマグルの面前でそうしたのであるから、驚くべきであればあるほど性た質ちが悪いと、私はそう考える」
顔をしかめていた者たちが、そのとおりだとざわめいた。それよりも、パーシーが殊しゅ勝しょうぶって小さく頷いているのを見たとき、ハリーはどうしても話をせずにはいられなくなった。
「吸魂鬼ディメンターのせいなんです」ハリーは、誰にも邪魔じゃまされないうちに、大声で言った。
ざわめきが大きくなるだろうと、ハリーは期待していた。ところが、沈ちん黙もくだった。なぜか、これまでよりもっと深い沈黙だった。
「吸魂鬼」しばらくしてマダム・ボーンズが言った。げじげじ眉まゆが吊つり上がり、片かたメガネが危あやうく落ちるかと思われた。
「君、どういうことかね」
「路地に、吸魂鬼が二人いたんです。そして、僕と、僕のいとこを襲おそったんです」
「ああ」ファッジが、ニヤニヤいやな笑い方をしながら、ウィゼンガモット法廷ほうていを見回した。あたかも、冗じょう談だんを楽しもうじゃないかと誘さそいかけているかのようだった。「うん、うん、こんな話を聞かされるのではないかと思った」
「リトル・ウィンジングに吸魂鬼」マダム・ボーンズが度肝どぎもを抜かれたような声を出した。
「わけがわからない――」
「そうだろう、アメリア」ファッジはまだ薄うすら笑いを浮かべていた。「説明しよう。この子は、いろいろ考え抜いて、吸魂鬼がなかなかうまい口実になるという結論けつろんを出したわけだ。まさにうまい話だ。マグルには吸魂鬼が見えないからな。そうだろう、君 好こう都つ合ごうだ、まさに好都合だ……君の証しょう言げんだけで、目もく撃げき者しゃはいない……」
「嘘うそじゃない」またしてもざわめき出した法廷に向かって、ハリーが大声を出した。「二体いたんだ。路地の両端からやって来た。周りが真っ暗になって、冷たくなって。いとこも吸魂鬼を感じて逃げ出そうとした――」
「たくさんだ。もうたくさん」ファッジが小バカにしたような顔で、傲然ごうぜんと言った。「せっかく何度も練習してきたに違いない嘘うそ話ばなしを、遮さえぎってすまんが――」
ダンブルドアが咳払せきばらいをした。ウィゼンガモット法廷が、再びしーんとなった。