「実は、路地に吸魂鬼が存在したことの証しょう人にんがおる。ダドリー・ダーズリーのほかに、という意味じゃが」ダンブルドアが言った。
ファッジのふっくら顔が、誰かに空気を抜き取られたように弛たるんだ。一ひと呼こ吸きゅう、二ふた呼吸、ダンブルドアをぐいと見下ろし、それから、辛かろうじて態勢たいせいを立て直した感じでファッジが言った。
「残念ながらダンブルドア、これ以上戯言たわごとを聞いている暇ひまはない。この件は早く片かたづけたい――」
「間違っておるかもしれんが」ダンブルドアは心地よく言った。「ウィゼンガモット権けん利り憲けん章しょうに、たしかにあるはずじゃ。被ひ告こく人にんは自分に関する事件の証しょう人にんを召しょう喚かんする権利を有するとな マダム・ボーンズ、これは魔法法ほう執しっ行こう部ぶの方針ほうしんではありませんかの」
ダンブルドアは片かたメガネの魔女に向かって話を続けた。
「そのとおり」マダム・ボーンズが言った。「まったくそのとおり」
「ああ、結構けっこう、結構」ファッジがばしりと言った。「証人はどこかね」
「一いっ緒しょに連れてきておる」ダンブルドアが言った。「この部屋の前におるが。それでは、わしが――」
「いや――ウィーズリー、君が行け」ファッジがパーシーに怒ど鳴なった。
パーシーはすぐさま立ち上がり、裁さい判ばん官かんバルコニーから石段を下りて、ダンブルドアとハリーには一瞥いちべつもくれずに、急いで脇わきを通り過ぎた。
パーシーは、すぐ戻ってきた。後ろにフィッグばあさんが従っている。怯おびえた様子で、いつにも増して風変ふうがわりに見えた。いつものスリッパを履はき替えてくる気配りがほしかったと、ハリーは思った。
ダンブルドアは立ち上がって椅子をばあさんに譲ゆずり、自分用にもう一つ椅子を取り出した。