「それなれば、魔法省は、必ずや徹てっ底てい的てきな調査をなさることでしょう。二人の吸魂鬼がなぜアズカバンからあれほど遠くにいたのか、なぜ承しょう認にんも受けず襲しゅう撃げきしたのか」
「魔法省が何をするかしないかは、ダンブルドア、あなたが決めることではない」ファッジがまた噛みついた。こんどは、バーノンおじさんも感服かんぷくするような赤あか紫むらさき色いろの顔だ。
「もちろんじゃ」ダンブルドアは穏おだやかに言った。「わしはただ、この件は必ずや調査がなされるものと信頼しんらいしておると述べたまでじゃ」
ダンブルドアはマダム・ボーンズをちらりと見た。マダム・ボーンズは片かたメガネを掛かけ直し、少し顔をしかめてダンブルドアをじっと見返した。
「各位かくいにあらためて申し上げる。これら吸魂鬼が、もし本当にこの少年のでっち上げでないとしたならだが、その行動は本件ほんけんの審しん理り事じ項こうではない」ファッジが言った。「本法廷ほうていの事件は、ハリー・ポッターの尋じん問もんであり、『未み成せい年ねん魔法使いの妥当だとうな制限せいげんに関する法令ほうれい』の違反いはん事件である」
「もちろんじゃ」ダンブルドアが言った。「しかし、路地に吸きゅう魂こん鬼きが存在したということは、本件ほんけんにおいて非常に関かん連れん性せいが高い。法令第七条によれば、例外的状況においては、マグルの前で魔法を使うことが可能であり、その例外的状況に含ふくまれる事態じたいとは、魔法使いもしくは魔女自身の生命を脅おびやかされ、もしくはそのときに存在するその他の魔法使い、魔女もしくはマグルの生命――」
「第七条は熟じゅく知ちしている。よけいなことだ」ファッジが唸うなった。
「もちろんじゃ」ダンブルドアは恭うやうやしく言った。「それなれば、我々は同意見となる。ハリーが守しゅ護ご霊れいの呪じゅ文もんを行使した状況は、この条じょう項こうに述べられるごとく、まさに例外的状況の範はん疇ちゅうに属ぞくするわけじゃな」
「吸魂鬼がいたとすればだ。ありえんが」
「目もく撃げき者しゃの証しょう言げんをお聞きになりましたな」ダンブルドアが口を挟はさんだ。「もし証言の信しん憑ぴょう性せいをお疑いなら、再度召しょう喚かんし喚問かんもんなさるがよい。証しょう人にんに異存いぞんはないはずじゃ」
「私は――それは――否いなだ――」ファッジは目の前の羊よう皮ひ紙しを掻かき回しながら、哮たけり狂った。
「それは――私は、本件を今日中に終らせたいのだ。ダンブルドア」