「しかし、重大な誤審ごしんを避さけんとすれば、大臣は、当然、何度でも証人喚問をなさることを厭いとわぬはずじゃ」ダンブルドアが言った。
「重大な誤審、まさか」ファッジはあらんかぎりの声を振り絞しぼった。「この少年が、学校外であからさまに魔法を不正使用して、それをごまかすのに何度でっち上げ話をしたか、数え上げたことがあるかね 三年前の浮ふ遊ゆう術じゅつ事件を忘れたわけではあるまいが――」
「あれは僕じゃない。屋敷やしきしもべ妖よう精せいだった」ハリーが言った。
「そーれ、聞いたか」ファッジが吠ほえて、派は手でな動作どうさでハリーを指した。「しもべ妖精 マグルの家で どうだ」
「問題の屋敷しもべ妖精は、現在ホグワーツ校に雇やとわれておる」ダンブルドアが言った。「ご要望ようぼうとあらば、すぐにでもここに召喚し、証言させることができる」
「私は――否いや――しもべ妖精の話など聞いている暇ひまはない とにかく、それだけではない――自分のおばを膨ふくらませた 言ごん語ご道どう断だん」ファッジは叫さけぶとともに、拳こぶしで裁さい判ばん官かんのデスクをバンと叩たたき、インク瓶びんをひっくり返した。
「そして、大臣はご厚こう情じょうをもって、その件は追つい及きゅうしないことになさった。たしか、最良の魔法使いでさえ、自分の感情を常に抑おさえることはできないと認められた上でのことと、推察すいさつ申し上げるが」ダンブルドアは静かに言った。ファッジはノートにひっかかったインクを拭ふき取ろうとしていた。
「さらに、私はまだ、この少年が学校で何をやらかしたかに触ふれていない」
「しかし、魔法省はホグワーツの生徒の学校における不ふ品ひん行こうについて、罰ばつする権限けんげんをお持ちではありませんな。学校におけるハリーの態度たいどは、本件ほんけんとは無関係じゃ」ダンブルドアの言葉は相変わらず丁寧ていねいだったが、いまや言葉の裏うらに、冷ひややかさが漂ただよっていた。