「おっほー」ファッジが言った。「学校で何をやろうと、魔法省は関係ないと そうですかな」
「コーネリウス、魔法省には、ホグワーツの生徒を退学にする権限はない。八月二日の夜に、念ねんを押したはずじゃ」ダンブルドアが言った。「さらに、罪ざい状じょうが黒とはっきり証しょう明めいされるまでは、杖つえを取り上げる権限もない。これも、八月二日の夜に念ねんを押したはずじゃ。大臣は、法律を擁護ようごせんとの情じょう熱ねつ黙もだしがたく、性せい急きゅうに事ことを運ばれるあまり、どうやらうっかり、うっかりに相違そういないが、ほかのいくつかの法律をお見逃みのがしのようじゃ」
「法律は変えられる」ファッジが邪険じゃけんに言った。
「そのとおりじゃ」ダンブルドアは小首こくびを傾かしげた。「そして、コーネリウス、君はどうやらずいぶん法律を変えるつもりらしいの。わしがウィゼンガモットを去るように要請ようせいされてからのほんの二、三週間の間に、単なる未み成せい年ねん者しゃの魔法使用の件を扱あつかうのに、なんと、刑けい事じ事じ件けんの大だい法ほう廷ていを召しょう集しゅうするやり方になってしもうたとは」
後列の魔法使いが何人か、居い心ごこ地ち悪そうにもぞもぞ座り直した。ファッジの顔はさらに深い暗あん褐かっ色しょくになった。しかし、右側のガマガエル魔女は、ダンブルドアをぐっと見み据すえただけで、顔色一つ変えない。
「わしの知るかぎり」ダンブルドアが続けた。「現在の法律のどこをどう探しても、本法廷がハリーのこれまで使った魔法を逐ちく一いち罰ばっする場であるとは書いてない。ハリーが起き訴そされたのは、ある特定の違い反はん事じ件けんであり、被ひ告こく人にんはその抗弁こうべんをした。被告人とわしがいまできることは、ただ評ひょう決けつを待つことのみじゃ」
ダンブルドアは再び指を組み、それ以上何も言わなかった。ファッジは明らかに激怒げきどしてダンブルドアを睨にらんでいる。ハリーは大だい丈じょう夫ぶなのかどうか確かめたくて、横目でダンブルドアを見た。ウィゼンガモットに対して、ダンブルドアが事実上、すぐ評決するよう促うながしたのが正しかったのかどうか、ハリーには確信かくしんが持てなかった。しかし、またしてもダンブルドアは、ハリーが視線しせんを合わせようとしているのに気づかないかのように、裁さい判ばん官かん席せきを見つめたままだった。ウィゼンガモット法廷は、全員が慌あわただしくひそひそ話を始めていた。