最後近くに、コーネリウス・ファッジとガマガエル魔女が地下室を出た。ファッジはウィーズリーおじさんとハリーが壁かべの一部であるかのように振舞ふるまったが、ガマガエル魔女のほうは、通りがかりにまたしてもハリーをまるで値ね踏ぶみするような目つきで見た。最後にパーシーが通った。ファッジと同じに父親とハリーを完全に無視して、大きな羊よう皮ひ紙しの巻紙まきがみと予よ備びの羽は根ねペンを何本か握にぎり締しめ、背中を突っ張らせ、つんと上を向いてすたすたと通り過ぎた。ウィーズリーおじさんの口の周りの皺しわが少し緊きん張ちょうしたが、それ以外、自分の三男を見たような素そ振ぶりは見せなかった。
「君をすぐ連れて帰ろう。吉報きっぽうを君からみんなに伝えられるように」
パーシーの踵かかとが地下九階への石段を上がって見えなくなったとたん、おじさんはハリーを手招てまねきして言った。
「ベスナル・グリーンのトイレに行くついでだから。さあ……」
「それじゃ、トイレはどうするつもりなの」
ハリーはニヤニヤしながら聞いた。突然、何もかもが、いつもの五倍もおもしろく思われた。だんだん実感が湧わいてきた。無罪むざいなんだ。ホグワーツに帰れるんだ。
「ああ、簡単な呪のろい破りですむ」
二人で階段を上がりながら、おじさんが言った。
「ただ、故こ障しょうの修しゅう理りだけの問題じゃない。むしろ、ハリー、公こう共きょう物ぶつ破は壊かいの裏うらにある態度たいどが問題だ。マグルをからかうのは、一部の魔法使いにとってはただ愉快ゆかいなことにすぎないかもしれないが、しかし、実はもっと根の深い、性た質ちの悪い問題の表れなんだ。だから、私なんかは――」
ウィーズリーおじさんははっと口をつぐんだ。地下九階の廊下ろうかに出たところだったが、目と鼻の先にコーネリウス・ファッジが立っていて、背が高く、滑なめらかなプラチナ・ブロンドの、顎あごが尖とがった青白あおじろい顔の男とひそひそ話をしていた。