「そっちこそ、いったい何の用だい」ハリーがルシウス・マルフォイに聞いた。
「私と大臣との私的なことは、ポッター、君には関係がないと思うが」
マルフォイがローブの胸のあたりを撫なでつけながら言った。金きん貨かがポケット一いっ杯ぱいに詰つまったような、チャリンチャリンという柔らかい音を、ハリーははっきり聞いた。
「まったく、君がダンブルドアのお気に入りだからといって、ほかの者もみな君を甘やかすとは期待しないでほしいものだ……では、大臣、お部屋のほうに参まいりますか」
「そうしよう」ファッジはハリーとウィーズリー氏に背を向けた。「ルシウス、こちらへ」
二人は低い声で話しながら、大股おおまたで立ち去った。ウィーズリーおじさんは、二人がエレベーターに乗り込んで姿が見えなくなるまで、ハリーの肩を放さなかった。
「何か用があるなら、なんであいつは、ファッジの部屋の前で待っていなかったんだ」ハリーは憤慨ふんがいして、吐はき捨すてるように言った。「ここで何してたんだ」
「こっそり法廷ほうていに入ろうとしていた。私はそう見るね」
おじさんはとても動揺どうようした様子で、誰かが盗み聞きしていないかどうか確かめるようにハリーの肩越しに目を走らせた。
「君が退学になったかどうかを確かめようとしたんだ。君を屋敷やしきまで送ったら、ダンブルドアに伝言を残そう。マルフォイがまたファッジと話をしていたと、ダンブルドアに知らせないと」
「二人の私的なことって、いったい何があるの」
「金貨だろう」おじさんは怒ったように言った。「マルフォイは、長年、あらゆることに気前よく寄き付ふしてきた……いい人じん脈みゃくが手に入る……そうすれば、有利な計はからいを受けられる……都合つごうの悪い法律の通過つうかを遅おくらせたり……ああ、あいつはいいコネを持っているよ。ルシウス・マルフォイってやつは」
エレベーターが来た。メモ飛行機の群れ以外は誰も乗っていない。おじさんがアトリウム階のボタンを押し、扉とびらがガチャリと閉まる間、メモ飛行機がおじさんの頭上をハタハタと飛んだ。おじさんは煩わずらわしそうに払い退のけた。