「おじさん」ハリーが考えながら聞いた。「もしファッジが、マルフォイみたいな『死し喰くい人びと』と会っていて、しかもファッジ一人で会っているなら、あいつらに『服ふく従じゅうの呪じゅ文もん』をかけられてないって言える」
「我々もそれを考えなかったわけではないよ、ハリー」ウィーズリーおじさんがひっそり言った。「しかし、ダンブルドアは、いまのところ、ファッジが自分の考えで動いていると考えている――だが、ダンブルドアが言うには、それだから安心というわけではない。ハリー、いまはこれ以上話さないほうがいい」
扉がスルスルと開き、二人はアトリウムに出た。いまはほとんど誰もいない。ガード魔マンのエリックは、また「日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん」の陰かげに埋もれていた。金色こんじきの噴水ふんすいをまっすぐに通り過ぎたとたん、ハリーはふと思い出した。
「待ってて……」おじさんにそう言うと、ハリーはポケットから巾きん着ちゃくを取り出し、噴水に戻った。
ハリーはハンサムな魔法使いの顔を見上げた。しかし近くで見ると、どうも弱々しい間ま抜ぬけな顔だとハリーは思った。魔女は美人コンテストのように意味のない笑顔えがおを見せていた。ハリーの知っている小こ鬼おにやケンタウルスは、どう考えても、こんなふうにおめでたい顔でうっとりとヒト族ぞくを見つめたりはしない。屋敷やしきしもべ妖よう精せいの、這はいつくばった追従へつらいの態度たいどだけが真実味があった。このしもべ妖精の像を見たら、ハーマイオニーが何と言うだろうと独ひとり笑いしながら、ハリーは巾きん着ちゃくを逆さかさに空あけ、十ガリオンどころか中身をそっくり泉に入れた。