「僕たちも君にキスしなくていいかい、ロン」
フレッドがいかにも心配そうな作り声で言った。
「跪ひざまずいてお辞じ儀ぎしてもいいぜ」ジョージが言った。
「バカ、やめろよ」ロンが二人を睨にらんだ。
「さもないと」フレッドの顔に、悪戯いたずらっぽいニヤリが広がった。「罰則ばっそくを与えるかい」
「やらせてみたいねぇ」ジョージが鼻先はなさきで笑った。
「気をつけないと、ロンは本当にそうできるんだから」
ハーマイオニーが怒ったように言った。
フレッドとジョージはゲラゲラ笑い出し、ロンは「やめてくれよ、ハーマイオニー」とモゴモゴ言った。
「ジョージ、俺おれたち、今後気をつけないとな」フレッドが震ふるえるふりをした。「この二人が我々にうるさくつきまとうとなると……」
「ああ、我らが規則きそく破りの日々もついに終りか」ジョージが頭を振り振り言った。
そして大きなバシッという音とともに、二人は「姿すがたくらまし」した。
「あの二人ったら」
ハーマイオニーが天井を睨にらんで怒ったように言った。天井を通して、こんどは上の部屋からフレッドとジョージが大笑いしているのが聞こえてきた。
「あの二人のことは、ロン、気にしないのよ。妬やっかんでるだけなんだから」
「そうじゃないと思うな」ロンも天井を見上げながら、違うよという顔をした。「あの二人、監督生になるのはアホだけだって、いつも言ってた……でも」ロンはうれしそうにしゃべり続けた。「あの二人は新しい箒を持ったことなんかないんだから ママと一いっ緒しょに行って選べるといいのに……ニンバスは絶対買えないだろうけど、新型のクリーンスイープが出てるんだ。あれだといいな……うん、僕、ママのところに行って、クリーンスイープがいいって言ってくる。ママに知らせておいたほうが……」
ロンが部屋を飛び出し、ハリーとハーマイオニーだけが取り残された。
なぜか、ハリーは、ハーマイオニーのほうを見たくなかった。ベッドに向かい、おばさんが置いていってくれた清潔せいけつなローブの山を抱え、トランクのほうに歩いた。