ハリーは顔をしかめ、両手で顔を覆おおった。自分に嘘うそはつけない。監督生のバッジが誰かに送られてくると知っていたら、自分のところに来ると期待したはずだ。ロンのところじゃない。僕はドラコ・マルフォイとおんなじ威い張ばり屋やなんだろうか 自分が他のみんなより優すぐれていると思っているんだろうか 本当に僕は、ロンより優れていると考えているんだろうか 違う、と小さな声が抵抗ていこうした。
本当に違うのか ハリーは恐る恐る自分の心をまさぐった。
「僕はクィディッチではより優れている」声が言った。「だけど、僕は、ほかのことでは何も優れてはいない」
それは絶対間違いないと、ハリーは思った。自分はどの科目でもロンより優れてはいない。だけど、それ以外では ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人で、ホグワーツ入学以来、いろいろ冒険ぼうけんをした。退学よりもっと危険な目にも遭あった。
そう、ロンもハーマイオニーもたいてい僕と一いっ緒しょだった。ハリーの頭の中の声が言った。
だけど、いつも一緒だったわけじゃない。ハリーは自分に言い返した。あの二人がクィレルと戦ったわけじゃない。リドルやバジリスクと戦いもしなかった。シリウスが逃亡とうぼうしたあの晩ばん、吸魂鬼ディメンターたちを追い払ったのもあの二人じゃない。ヴォルデモートが蘇よみがえったあの晩、二人は僕と一緒に墓場にいたわけじゃない……。
こんな扱あつかいは不当だという思いが込み上げてきた。ここに到とう着ちゃくした晩に突つき上げてきた思いと同じだった。僕のほうが絶対いろいろやってきた。ハリーは腸はらわたが煮にえくり返る思いだった。二人よりも僕のほうがいろいろ成なし遂とげたんだ
だけど、たぶん、小さな公平な声が言った。たぶんダンブルドアは、幾多いくたの危険な状況に首を突っ込んだからといって、それで監かん督とく生せいを選ぶわけじゃない……ほかの理由で選ぶのかもしれない……ロンは僕の持っていない何かを持っていて……。
ハリーは目を開け、指の間から洋よう箪だん笥すの猫足形の脚あしを見つめ、フレッドの言ったことを思い出していた。「正気でロンを監督生にするやつぁいないぜ……」
ハリーはプッと吹き出した。そのすぐあとで自分がいやになった。