監督生バッジをくれと、ロンがダンブルドアに頼んだわけじゃない。ロンが悪いわけじゃない。ロンの一番の親友の僕が、自分がバッジをもらえなかったからと言って拗すねたりするのか 双子ふたごと一緒になって、ロンの背後で笑うのか ロンが初めて何かひとつハリーに勝ったというのに、その気持に水を注さす気か
ちょうどそのとき、階段を戻ってくるロンの足音が聞こえた。ハリーは立ち上がってメガネを掛かけ直し、顔に笑いを貼はりつけた。ロンがドアから弾はずむように入ってきた。
「ちょうど間に合った」ロンがうれしそうに言った。「できればクリーンスイープを買うってさ」
「かっこいい」ハリーが言った。自分の声が変に上うわずっていないのでほっとした。「おい――ロン――おめでとっ」
ロンの顔から笑いが消えていった。
「僕だなんて、考えたことなかった」ロンが首を振り振り言った。「僕、君だと思ってた」
「いーや、僕はあんまりいろいろトラブルを起こしすぎた」
ハリーはフレッドの言葉を繰くり返した。
「うん」ロンが言った。「うん、そうだな……さあ、荷造にづくりしちまおうぜ、な」
なんとも奇き妙みょうなことに、ここに到とう着ちゃくして以来、二人の持ち物が勝手に散らばってしまったようだった。屋敷やしきのあちこちから、本やら持ち物やらを掻かき集めて学校用のトランクに戻すのに、ほとんど午後一いっ杯ぱいかかった。ロンが監督生バッジを持ってそわそわしているのに、ハリーは気づいた。はじめは自分のベッド脇わきのテーブルの上に置き、それからジーンズのポケットに入れ、またそれを取り出して、黒の上で赤色が映はえるかどうか確かめるかのように、たたんだローブの上に置いた。フレッドとジョージがやって来て、「永えい久きゅう粘ねん着ちゃく術じゅつ」でバッジをロンの額ひたいに貼はりつけてやろうかと申し出たとき、ロンはやっと、バッジを栗くり色のソックスにそっと包んでトランクに入れ、鍵かぎを掛かけた。