「まあ、アラスター、いらしてよかったわ」
マッド‐アイが旅行用マントを肩から振り落とすように脱ぐと、ウィーズリーおばさんが朗ほがらかに言った。
「ずっと前から、お願いしたいことがあったの――客きゃく間まの文ふ机づくえを見て、中に何がいるか教えてくださらない とんでもないものが入っているといけないと思って、開けなかったの」
「引き受けた、モリー……」
ムーディの鮮あざやかな明るいブルーの目が、ぐるりと上を向き、厨房の天井を通過つうかしてその上を凝ぎょう視しした。
「客間……っと」マッド‐アイが唸うなり、瞳孔どうこうが細くなった。「隅すみの机か うん、なるほど……。ああ、まね妖怪ようかいだな……モリー、わしが上に行って片かたづけようか」
「いえ、いえ、あとで私がやりますよ」ウィーズリーおばさんがにっこりした。
「お飲み物でもどうぞ。実はちょっとしたお祝いなの」おばさんは真紅の横断幕を示した。
「兄弟で四番目の監督生よ」
おばさんは、ロンの髪かみをくしゃくしゃっと撫なでながら、うれしそうに言った。
「監督生、む」ムーディが唸うなった。普通の目がロンに向き、魔法の目はぐるりと回って頭の横を見た。ハリーはその目が自分を見ているような落ち着かない気分になって、シリウスとルーピンのほうに移動した。
「うむ。めでたい」ムーディは普通の目でロンをじろじろ見たまま言った。「権威けんいある者は常にトラブルを引き寄せる。しかし、ダンブルドアはおまえが大概たいがいの呪のろいに耐たえることができると考えたのだろうて。さもなくば、おまえを任命にんめいしたりはせんからな……」
ロンはそういう考え方を聞いてぎょっとした顔をしたが、そのとき父親と長ちょう兄けいが到とう着ちゃくしたので、何も答えずにすんだ。ウィーズリーおばさんは上じょう機き嫌げんで、二人がマンダンガスを連れてきたのに文句も言わなかった。マンダンガスは長いオーバーを着ていて、それがあちこち変なところで奇き妙みょうに膨ふくらんでいた。オーバーを脱いでムーディの旅行マントのところに掛かけたらどうかという申し出を、マンダンガスは断ことわった。