「『有ゆう毒どく食しょく虫ちゅう蔓づる』の種だ」ジョージが言った。「『ずる休みスナックボックス』に必要なんだ。だけど、これは取とり引ひき禁きん止し品ひん目もくクラスで、手に入れるのにちょっと問題があってね」
「じゃ、全部で十ガリオンだね、ダング」フレッドが言った。
「俺がこンだけ苦労して手に入れたンにか」マンダンガスが弛たるんで血走った目を見開いた。
「お気の毒さまーだ。二十ガリオンから、びた一クヌートもまけらンねえ」
「ダングは冗じょう談だんが好きでね」フレッドがハリーに言った。
「まったくだ。これまでの一番は、ナールの針はりのペン一袋で六シックルさ」ジョージが言った。
「気をつけたほうがいいよ」ハリーがこっそり注意した。
「なんだ」フレッドが言った。「お袋ふくろは監督生ロンにおやさしくするので手一いっ杯ぱいさ。俺おれたちゃ、大丈夫だ」
「だけど、ムーディがこっちに目をつけてるかもしれないよ」ハリーが指摘してきした。
マンダンガスがおどおどと振り返った。
「ちげえねえ。そいつぁ」マンダンガスが唸うなった。「よーし、兄きょう弟でえ。十でいい。いますぐ引き取っちくれンなら」
マンダンガスはポケットをひっくり返し、双子ふたごがさし出した手に中身を空あけ、せかせかと食べ物のほうに行った。
「ありがとさん、ハリー」フレッドがうれしそうに言った。「こいつは上に持っていったほうがいいな……」
ハリーは双子が上に行くのを見ながら、少し後ろめたい思いが胸を過よぎった。ウィーズリーおじさん、おばさんは、どうしたって最終的には双子の「悪戯いたずら専せん門もん店てん」のことを知ってしまう。そのとき、フレッドとジョージがどうやって資金しきんをやり繰くりしたのかを知ろうとするだろう。あのときは三校対たい抗こう試じ合あいの賞しょう金きんを双子に提てい供きょうするのが、とても単たん純じゅんなことに思えた。しかし、もしそれがまた家族の争いを引き起こすことになったら パーシーのような仲違なかたがいになったら フレッドとジョージに手を貸かし、おばさんがふさわしくないと思っている仕事を始めさせたのがハリーだとわかったら、それでもおばさんはハリーのことを息子同然と思ってくれるだろうか
双子が立ち去ったあと、ハリーはそこに独ひとりぼっちで立っていた。胃の腑ふにのしかかった罪ざい悪あく感かんの重みだけが、ハリーにつき合っていた。ふと、自分の名前が耳に入った。キングズリー・シャックルボルトの深い声が、周囲のおしゃべり声をくぐり抜けて聞こえてきた。