ルーピンが客きゃく間まに駆かけ上がってきた。すぐあとからシリウス、その後ろにムーディがコツッコツッと続いた。ルーピンはウィーズリーおばさんから、転がっているハリーの死体へと目を移し、すぐに理解したようだった。杖を取り出し、ルーピンが力強く、はっきりと唱となえた。
「リばデかィばクかラしスい」
ハリーの死体が消えた。死体が横たわっていたあたりに、銀ぎん白はく色しょくの球が漂ただよった。ルーピンがもう一度杖を振ると、球は煙となって消えた。
「おぉ――おぉ――おぉ」ウィーズリーおばさんは嗚咽おえつを漏もらし、堪こらえきれずに両手に顔を埋うずめて激はげしく泣き出した。
「モリー」ルーピンがおばさんに近寄り、沈んだ声で言った。「モリー、そんなに……」
次の瞬しゅん間かん、おばさんはルーピンの肩に縋すがり、胸も張はり裂さけんばかりに泣きじゃくった。
「モリー、ただのまね妖怪ようかいだよ」ルーピンがおばさんの頭をやさしく撫なでながら慰なぐさめた。「ただのくだらないまね妖怪だ……」
「私、いつも、みんなが死――死――死ぬのが見えるの」おばさんはルーピンの肩で呻いた。「い――い――いつもなの ゆ――ゆ――夢に見るの……」
シリウスは、まね妖怪がハリーの死体になって横たわっていたあたりの絨毯を見つめていた。ムーディはハリーを見ていた。ハリーは目を逸そらした。ムーディの魔法の目が、ハリーを厨ちゅう房ぼうからずっと追いかけていたような奇き妙みょうな感じがした。
「アーサーには、い――い――言わないで」おばさんは嗚咽しながら、袖口そでぐちで必死に両りょう眼めを拭ぬぐった。
「私、アーサーにし――し――知られたくないの……ばかなこと考えてるなんて……」
ルーピンがおばさんにハンカチを渡すと、おばさんはチーンと洟はなをかんだ。
「ハリー、ごめんなさい。私に失望したでしょうね」おばさんが声を震ふるわせた。「たかがまね妖よう怪かい一いっ匹ぴきも片かたづけられないなんて……」
「そんなこと」ハリーはにっこりしてみせようとした。