しかし大きな黒犬は、うれしそうに吼ほえながら、三人の周りを跳はね回り、鳩はとに噛かみつくまねをしたり、自分の尻尾しっぽを追いかけたりしていた。ハリーは思わず笑った。シリウスはそれだけ長い間屋敷やしきに閉じ込められていたのだ。ウィーズリーおばさんは、ペチュニアおばさん並みに、唇くちびるをぎゅっと結んでいた。
キングズ・クロスまで歩いて二十分かかった。その間何事もなく、せいぜいシリウスが、ハリーを楽しませようと猫を二、三匹脅おどしたくらいだった。駅の中に入ると、みんなで九番線と十番線の間の柵さくの脇を何気なくうろうろし、安全を確認かくにんした。そして一人ずつ柵に寄り掛かかり、楽々通り抜けて九と四分の三番線に出た。そこにはホグワーツ特急が停車ていしゃし、煤すすけた蒸じょう気きをプラットホームに吐はき出していた。プラットホームは出発を待つ生徒や家族で一いっ杯ぱいだった。ハリーは懐なつかしい匂においを吸い込み、心が高まるのを感じた……本当に帰るんだ……。
「ほかの人たちも間に合えばいいけど」ウィーズリーおばさんが、プラットホームに架かかる鉄のアーチを振り返り、心配そうに見つめた。そこからみんなが現れるはずだ。
「いい犬だな、ハリー」縮ちぢれっ毛をドレッドヘアにした、背の高い少年が声をかけた。
「ありがとう、リー」ハリーがにこっとした。シリウスはちぎれるほど尻尾しっぽを振った。
「ああ、よかった」おばさんがほっとしたように言った。「アラスターと荷物だわ。ほら……」
不揃ふぞろいの目に、ポーター帽子ぼうしを目深まぶかに被かぶり、トランクを積んだカートを押しながら、ムーディがコツッコツッとアーチをくぐってやってきた。
「すべてオーケーだ」ムーディがおばさんとトンクスに呟つぶやいた。「追跡ついせきされてはおらんようだ……」
すぐあとから、ロンとハーマイオニーを連れたウィーズリーおじさんがホームに現れた。ムーディのカートからほとんど荷物を降おろし終えたころ、フレッド、ジョージ、ジニーがルーピンと一いっ緒しょに現れた。