ロン、ハーマイオニー、ジニーが、そばで手を振った。トンクス、ルーピン、ムーディ、ウィーズリーおじさん、おばさんの姿があっという間に小さくなった。しかし黒犬は、尻尾を振り、窓のそばを汽車と一緒に走った。飛び去って行くホームの人影ひとかげが、汽車を追いかける犬を笑いながら見ていた。汽車がカーブを曲がり、シリウスの姿が見えなくなった。
「シリウスは一いっ緒しょに来るべきじゃなかったわ」ハーマイオニーが心配そうな声で言った。
「おい、気軽にいこうぜ」ロンが言った。「もう何ヵ月も陽ひの光を見てないんだぞ、かわいそうに」
「さーてと」フレッドが両手を打ち鳴らした。「一日中むだ話をしているわけにはいかない。リーと仕事の話があるんだ。またあとでな」フレッドとジョージは、通路つうろを右へと消えた。
汽車は速度を増し、窓の外を家々が飛ぶように過ぎ去り、立っていると皆ぐらぐら揺ゆれた。
「それじゃ、コンパートメントを探そうか」ハリーが言った。
ロンとハーマイオニーが目配めくばせし合った。
「えーと」ロンが言った。
「私たち――えーと――ロンと私はね、監かん督とく生せいの車両に行くことになってるの」ハーマイオニーが言いにくそうに言った。
ロンはハリーを見ていない。自分の左手の爪つめにやけに強い興きょう味みを持ったようだ。
「あっ」ハリーが言った。「そうか、いいよ」
「ずーっとそこにいなくともいいと思うわ」ハーマイオニーが急いで言った。「手紙によると、男女それぞれの首席の生徒から指示を受けて、ときどき車内の通路をパトロールすればいいんだって」
「いいよ」ハリーがまた言った。「えーと、それじゃ、僕――僕、またあとでね」
「うん、必ず」ロンが心配そうにおずおずとハリーを盗み見ながら言った。「あっちに行くのはいやなんだ。僕はむしろ――だけど、僕たちしょうがなくて――だからさ、僕、楽しんではいないんだ。僕、パーシーとは違う」ロンは反抗はんこうするように最後の言葉を言った。
「わかってるよ」ハリーはそう言ってにっこりした。