「こんにちは、ルーナ」ジニーが挨拶した。「ここに座ってもいい」
窓際まどぎわの女の子が目を上げた。濁にごり色のブロンドの髪かみが腰まで伸び、バラバラと広がっている。眉毛まゆげがとても薄うすい色で、目が飛び出しているので、普通の表情でもびっくり顔だ。ネビルがどうしてこのコンパートメントをパスしようと思ったのか、ハリーはすぐにわかった。この女の子には、明らかに変人のオーラが漂ただよっている。もしかしたら、杖つえを安全に保管ほかんするのに、左耳に挟はさんでいるせいか、よりによってバタービールのコルクを繋つなぎ合わせたネックレスを掛かけているせいか、または雑誌ざっしを逆さかさまに読んでいるせいかもしれない。女の子の目がネビルをじろっと見て、それからハリーをじっと見た。そして頷うなずいた。
「ありがとう」ジニーが女の子に微笑ほほえんだ。ハリーとネビルは、トランク三個とヘドウィグの籠かごを荷に物もつ棚だなに上げて腰を掛かけた。ルーナが逆さの雑誌の上から二人を見ていた。雑誌には「ザ・クィブラー」と書いてある。この子は、普通の人間より瞬まばたきの回数が少なくてすむらしい。ハリーを見つめに見つめている。ハリーは、真向かいに座ったことを後悔こうかいした。
「ルーナ、いい休みだった」ジニーが聞いた。
「うん」ハリーから目を離はなさずに、ルーナが夢見るように言った。「うん、とっても楽しかったよ。あんた、ハリー・ポッターだ」ルーナが最後につけ加えた。
「知ってるよ」ハリーが言った。
ネビルがクスクス笑った。ルーナが淡あわい色の目を、こんどはネビルに向けた。
「だけど、あんたが誰だか知らない」
「僕、誰でもない」ネビルが慌あわてて言った。
「違うわよ」ジニーが鋭するどく言った。「ネビル・ロングボトムよ――こちらはルーナ・ラブグッド。ルーナはわたしと同学年だけど、レイブンクローなの」