「これ――あの――役に立つの」ハリーが聞いた。
「いっぱい」ネビルが得意げに言った。「これ、びっくりするような防ぼう衛えい機能きのうを持ってるんだ。ほら、ちょっとトレバーを持ってて……」
ネビルはヒキガエルをハリーの膝ひざに落とし、カバンから羽は根ねペンを取り出した。ルーナ・ラブグッドの飛び出した目が、逆さかさまの雑誌ざっしの上からまた現れ、ネビルのやることを眺ながめていた。ネビルはミンビュラス・ミンブルトニアを目の高さに掲かかげ、舌を歯の間からちょこっと突き出し、適当てきとうな場所を選んで、羽根ペンの先でその植物をちくりと突っついた。
植物のおできというおできから、ドロリとした暗あん緑りょく色しょくの臭い液体えきたいがどっと噴ふん出しゅつした。それが天井やら窓やらに当たり、ルーナ・ラブグッドの雑誌にひっかかった。危き機き一いっ髪ぱつ、ジニーは両腕で顔を覆ったが、べトッとした緑色の帽子ぼうしを被かぶっているように見えた。ハリーは、トレバーが逃げないように押さえて両手が塞ふさがっていたので、思いっ切り顔で受けた。腐くさった堆肥たいひのような臭いがした。
ネビルは顔も体もベットリで、目にかかった最悪の部分を払い落とすのに頭を振った。
「ご――ごめん」ネビルが息を呑のんだ。「僕、試ためしたことなかったんだ……知らなかった。こんなに……でも、心配しないで。『臭しゅう液えき』は毒じゃないから」ハリーが口一いっ杯ぱいに詰つまった液を床に吐はき出したのを見て、ネビルがおどおどと言った。
ちょうどそのとき、コンパートメントの戸が開いた。
「あら……こんにちは、ハリー……」緊きん張ちょうした声がした。「あの……悪いときに来てしまったかしら」
ハリーはトレバーから片手かたてを離はなし、メガネを拭ぬぐった。長い艶つやつやした黒くろ髪かみの、とてもかわいい女の子が戸口に立ち、ハリーに笑いかけていた。レイブンクローのクィディッチのシーカー、チョウ・チャンだ。