十四年間、シリウス・ブラックは十二人のマグルと一人の魔法使いを殺した大たい量りょう殺さつ人じん者しゃとして有罪ゆうざいとされてきた。二年前、大だい胆たん不ふ敵てきにもアズカバンから脱獄だつごくした後のち、魔法省始まって以来の広こう域いき捜そう査さ網もうが張られている。ブラックが再さい逮捕たいほされ、吸魂鬼ディメンターの手に引き渡されるべきであることを、誰も疑わない。
しかし、そうなのか
最近明るみに出た驚おどろくべき新事実によれば、シリウス・ブラックは、アズカバン送りになった罪つみを犯おかしていないかもしれない。事実、リトル・ノートンのアカンサス通り十八番地に住むドリス・パーキスによれば、ブラックは殺人現場にいなかった可能性がある。
「シリウス・ブラックが仮名かめいだってことに、誰も気づいてないのよ」とパーキス夫人は語った。「みんながシリウス・ブラックだと思っているのは、本当はスタビィ・ボードマンで、『ザ・ホブゴブリンズ』という人気シンガーグループのリードボーカルだった人よ。十五年ぐらい前に、リトル・ノートンのチャーチ・ホールでのコンサートのとき、耳を蕪かぶで打たれて引退したの。新聞でブラックの写真を見たとき、私にはすぐわかったわ。ところで、スタビィはあの事件を引き起こせたはずがないの。だって、事件の日、あの人はちょうど、蝋燭ろうそくの灯あかりの下で、私とロマンチックなディナーを楽しんでいたんですもの。私、もう魔法省に手紙を書きましたから、シリウスことスタビィは、もうすぐ特赦とくしゃになると期待してますわ」
読み終えて、ハリーは信じられない気持でそのページを見つめた。冗じょう談だんかもしれない、とハリーは思った。この雑誌ざっしはよくパロディを載のせるのかもしれない。ハリーはまたパラパラと二、三ページめくり、ファッジの記事を見つけた。