「そのふくろう、あたしが持ってあげてもいいよ」ルーナはハリーにそう言うと、ピッグウィジョンの籠かごに手を伸ばした。ネビルはトレバーをしっかり内ポケットに入れた。
「あ――え――ありがとう」ハリーは籠を渡し、ヘドウィグの籠のほうをしっかり両腕に抱えた。
全員がなんとかコンパートメントを出て、通路つうろの生徒の群れに加わると、冷たい夜風の最初のひと吹きがぴりっと顔を刺さした。出口のドアに近づくと、ハリーは湖への道の両側に立ち並ぶ松の木の匂においを感じた。ハリーはホームに降り、周りを見回して、懐なつかしい「イッチ年生はこっち……イッチ年生……」の声を聞こうとした。
しかし、その声が聞こえない。代わりに、まったく別の声が呼びかけていた。きびきびした魔女の声だ。「一年生はこっちに並んで 一年生は全員こっちにおいで」
カンテラが揺ゆれながらこっちにやって来た。その灯あかりで、突き出した顎あごとガリガリに刈かり上げた髪かみが見えた。グラブリー‐プランク先生、去年ハグリッドの「魔ま法ほう生せい物ぶつ飼し育いく学がく」をしばらく代行した魔女だった。
「ハグリッドはどこ」ハリーは思わず声に出した。
「知らないわ」ジニーが答えた。「とにかく、ここから出たほうがいいわよ。私たち、ドアを塞ふさいじゃってる」
「あ、うん……」ホームを歩き、駅を出るまでに、ハリーはジニーとはぐれてしまった。人波に揉もまれながら、ハリーは暗がりに目を凝こらしてハグリッドの姿を探した。ここにいるはずだ。ハリーはずっとそれを心の拠より所どころにしてきた――またハグリッドに会える。それが、ハリーの一番楽しみにしていたことの一つだった。しかし、どこにもハグリッドの気配はない。