「いなくなるはずはない」出口への狭い道を生徒の群れに混じって小刻こきざみにのろのろ歩き、外の通りに向かいながら、ハリーは自分に言い聞かせていた。「風か邪ぜを引いたかなんかだろう……」。
ハリーはロンとハーマイオニーを探した。グラブリー‐プランク先生が再登場したことを、二人がどう思うか知りたかった。しかし、二人ともハリーの近くには見当たらない。しかたなく、ハリーはホグズミード駅の外に押し出され、雨に洗われた暗い道路に立った。
二年生以上の生徒を城まで連れて行く馬なしの馬車が、百台余あまりここに待っているのだ。ハリーは馬車をちらりと見て、すぐ目を逸そらし、ロンとハーマイオニーを探しにかかったが、そのとたん、ぎょっとした。
馬車はもう馬なしではなかった。馬車の轅ながえの間に、生き物がいた。名前をつけるなら、馬と呼ぶべきなのだろう。しかし、なんだか爬は虫ちゅう類るいのようでもある。まったく肉がなく、黒い皮が骨にぴったり張りついて、骨の一本一本が見える。頭はドラゴンのようだ。瞳ひとみのない目は白濁はくだくし、じっと見つめている。背中の隆りゅう起きした部分から翼つばさが生はえている――巨大な黒い鞣なめし革がわのような翼は、むしろ巨大コウモリの翼にふさわしい。暗くら闇やみにじっと静かに立ち尽くす姿は、この世の物とも思えず、不吉ふきつに見えた。馬なしで走れる馬車なのに、なぜこんな恐ろしげな馬に牽ひかせなければならないのか、ハリーには理解できなかった。
「ピッグはどこ」すぐ後ろでロンの声がした。
「あのルーナって子が持ってるよ」ハリーは急いで振り返った。ロンにハグリッドのことを早く相談したかった。「いったいどこに――」
「ハグリッドがいるかって さあ」ロンも心配そうな声だ。「無事だといいけど……」