少し離はなれたところに、取り巻きのクラッブ、ゴイル、パンジー・パーキンソンを従えたドラコ・マルフォイがいて、おとなしそうな二年生を押し退のけ、自分たちが馬車を一台独占どくせんしようとしていた。やがてハーマイオニーが、群れの中から息を切らして現れた。
「マルフォイのやつ、あっちで一年生に、ほんとにむかつくことをしてたのよ。絶対に報告してやる。ほんの三分もバッジを持たせたら、嵩かさにかかって前よりひどいいじめをするんだから……クルックシャンクスはどこ」
「ジニーが持ってる」ハリーが答えた。「あ、ジニーだ……」
ジニーがちょうど群れから現れた。じたばたするクルックシャンクスをがっちり押さえている。
「ありがとう」ハーマイオニーは、ジニーを猫から解放かいほうしてやった。「さあ、一いっ緒しょに馬車に乗りましょう。満席にならないうちに……」
「ピッグがまだだ」ロンが言った。しかし、ハーマイオニーはもう一番近い空からの馬車に向かっていた。ハリーはロンと一緒にあとに残った。
「こいつら、いったい何だと思う」他の生徒たちを次々やり過ごしながら、ハリーは気味の悪い馬を顎あごで指してロンに聞いた。
「こいつらって」
「この馬だよ――」
ルーナがピッグウィジョンの籠かごを両腕に抱えて現れた。チビふくろうは、いつものように興こう奮ふんして囀さえずっていた。
「はい、これ」ルーナが言った。「かわいいチビふくろうだね」
「あ……うん……まあね」ロンが無ぶ愛あい想そうに言った。「えーと、さあ、じゃ、乗ろうか……ハリー、なんか言ってたっけ」
「うん。この馬みたいなものは何だろう」ロンとルーナと三人で、ハーマイオニーとジニーが乗り込んでいる馬車のほうに歩きながら、ハリーが言った。
「どの馬みたいなもの」
「馬車を牽ひいてる馬みたいなもの」ハリーはイライラしてきた。一番近いのは、ほんの一メートル先にいるのに。虚うつろな白濁はくだくした目でこっちを見ているのに。しかし、ロンはわけがわからない目つきでハリーを見た。