「単に恐いからだろ」ロンが言った。
「ほとんど首無しニック」は大いに気を悪くしたようだった。
「恐い 痩やせても枯かれてもニコラス・ド・ミムジー・ポーピントン卿きょう。命在ありしときも絶ぜつ命めい後ごも、臆おく病びょうの汚名おめいを着たことはありません。この体に流れる気高けだかき血は――」
「どの血」ロンが言った。「まさか、まだ血があるの――」
「言葉の綾あやです」「ほとんど首無しニック」は憤慨ふんがいのあまり、ほとんど切り離はなされている首がわなわなと危なっかしげに震ふるえていた。「私が言ことの葉はをどのように使おうと、その楽しみは、まだ許されていると愚考ぐこうする次第です。たとえ飲食の楽しみこそ奪うばわれようと。しかし、私の死を愚弄ぐろうする生徒がいることには、この僕やつがれ、慣れております」
「ニック、ロンはあなたのことを笑い物にしたんじゃないわ」ハーマイオニーがロンに恐ろしい一瞥いちべつを投げた。
不幸にも、ロンの口はまたしても爆発ばくはつ寸前まで詰つめ込こまれていたので、やっと言葉になったのは「ちがン ぼっきみンきぶン ごいすンつもるらい」だった。ニックはこれでは十分な謝罪しゃざいにはならないと思ったらしい。羽飾はねかざりつきの帽子ぼうしを直ただし、空中に浮き上がり、ニックはそこを離はなれてテーブルの端に行き、コリン、デニスのクリービー兄弟の間に座った。
「お見事ね、ロン」ハーマイオニーが食ってかかった。
「なんが」やっと食べ物を飲み込み、ロンが怒ったように言った。「簡単な質問をしちゃいけないのか」
「もう、いいわよ」ハーマイオニーがイライラと言った。
それからは、食事の間中、二人はぷりぷりして互いに口をきかなかった。
ハリーは二人のいがみ合いには慣れっこになって、仲直りさせようとも思わなかった。ステーキ・キドニー・パイをせっせと食べるほうが時間の有効ゆうこう利用だと思った。そのあとは、好物の糖蜜とうみつタルトを皿一いっ杯ぱいに盛って食べた。