ダンブルドアはほんの一いっ瞬しゅん驚おどろいた様子だったが、すぐ優雅ゆうがに腰を掛かけ、謹きん聴ちょうするような顔をした。アンブリッジ先生の話を聞くことほど望ましいことはないと言わんばかりの表情だった。他の先生たちは、ダンブルドアほど巧たくみには驚きを隠せなかった。スプラウト先生の眉毛まゆげは、ふわふわ散らばった髪かみの毛に隠れるほど吊つり上がり、マクゴナガル先生の唇くちびるは、ハリーが見たこともないほど真ま一いち文もん字じに結ばれていた。これまで新任しんにんの先生が、ダンブルドアの話を途と中ちゅうで遮さえぎったことなどない。ニヤニヤしている生徒が多かった。――この女、ホグワーツでの仕来しきたりを知らないな。
「校長先生」アンブリッジ先生が作り笑いをした。「歓迎かんげいのお言葉恐れ入ります」
女の子のような甲高かんだかい、ため息混じりの話し方だ。ハリーはまたしても、自分でも説明のつかない強い嫌悪けんおを感じた。とにかくこの女に関するものは全部大嫌いだということだけはわかった。バカな声、ふんわりしたピンクのカーディガン、何もかも。再び軽い咳払いをして「ェヘン、ェヘン」アンブリッジ先生は話を続けた。
「さて、ホグワーツに戻ってこられて、本当にうれしいですわ」
にっこりすると尖とがった歯が剥むき出しになった。
「そして、みなさんの幸せそうなかわいい顔がわたくしを見上げているのは素敵すてきですわ」
ハリーはぐるりと見回した。見渡すかぎり、幸せそうな顔など一つもない。むしろ、五歳児扱あつかいされて、みな愕然がくぜんとした顔だった。
「みなさんとお知り合いになれるのを、とても楽しみにしております。きっとよいお友達になれますわよ」
これにはみんな顔を見合わせた。冷れい笑しょうを隠さない生徒もいた。
「あのカーディガンを借かりなくていいなら、お友達になるけど」パーバティがラベンダーに囁ささやき、二人は声を殺してクスクス笑った。