アンブリッジ先生はまた咳払いした。「ェヘン、ェヘン」。次に話し出したとき、ため息混じりが少し消えて、話し方が変わっていた。ずっとしっかりした口調で、暗記したように無む味み乾かん燥そうな話し方になっていた。
「魔法省は、若い魔法使いや魔女の教育は非常に重要であると、常にそう考えてきました。みなさんが持って生まれた稀まれなる才能は、慎しん重ちょうに教え導みちびき、養やしなって磨みがかなければものになりません。魔法界独自どくじの古来こらいからの技を、後代こうだいに伝えていかなければ、永久に失われてしまいます。われらが祖先そせんが集しゅう大たい成せいした魔法の知識の宝庫ほうこは、教育という気高い天てん職しょくを持つものにより、守り、補おぎない、磨かれていかねばなりません」
アンブリッジ先生はここで一息ひといき入れ、同どう僚りょうの教きょう授じゅ陣じんに会え釈しゃくした。誰も会釈を返さない。マクゴナガル先生の黒々とした眉まゆがぎゅっと縮ちぢまって、まさに鷹たかそっくりだった。しかも意味ありげにスプラウト先生と目を見み交かわしたのを、ハリーは見た。アンブリッジはまたまた「ェヘン、ェヘン」と軽い咳払せきばらいをして、話を続けた。
「ホグワーツの歴代れきだい校長は、この歴史ある学校を治める重じゅう職しょくを務めるにあたり、何らかの新規しんきなものを導どう入にゅうしてきました。そうあるべきです。進歩がなければ停滞ていたいと衰退すいたいあるのみ。しかしながら、進歩のための進歩は奨しょう励れいされるべきではありません。なぜなら、試練しれんを受け、証しょう明めいされた伝統でんとうは、手を加える必要がないからです。そうなると、バランスが大切です。古きものと新しきもの、恒こう久きゅう的てきなものと変化、伝統と革新かくしん……」