ハリーは注意力が退ひいていくのがわかった。脳みその周しゅう波は数すうが、合ったりはずれたりするようだった。ダンブルドアが話すときには大広間は常にしんとしているが、いまはそれが崩くずれ、生徒は額ひたいを寄せ合って囁ささやいたりクスクス笑ったりしていた。レイブンクローのテーブルでは、チョウ・チャンが友達とさかんにおしゃべりしていた。そこから数席離はなれたところで、ルーナ・ラブグッドがまた「ザ・クィブラー」を取り出していた。一方いっぽうハッフルパフのテーブルでは、アーニー・マクミランだけが、まだアンブリッジ先生を見つめている数少ない一人だった。しかし、目が死んでいた。胸に光る新しい監かん督とく生せいバッジの期待に応こたえるため、聞いているふりをしているだけに違いない、とハリーは思った。
アンブリッジ先生は、聴ちょう衆しゅうのざわつきなど気がつかないようだった。ハリーの印いん象しょうでは、大々的な暴動ぼうどうが目の前で勃発ぼっぱつしても、この女は延々えんえんとスピーチを続けるに違いない。しかし教授陣はまだ熱心に聴きいていた。ハーマイオニーもアンブリッジの言葉を細さい大だい漏もらさず呑のみ込こんでいた。もっともその表情から見ると、まったくおいしくなさそうだ。
「……なぜなら、変化には改善かいぜんの変化もある一方いっぽう、時とき満ちれば、判断の誤あやまりと認められるような変化もあるからです。古き慣かん習しゅうのいくつかは維い持じされ、当然そうあるべきですが、陳ちん腐ぷ化かし、時代遅おくれとなったものは放棄ほうきされるべきです。保ほ持じすべきは保持し、正すべきは正し、禁ずべきやり方とわかったものは何であれ切り捨すて、いざ、前進しようではありませんか。開かい放ほう的てきで効こう果か的てきで、かつ責任ある新しい時代へ」
アンブリッジ先生が座った。ダンブルドアが拍はく手しゅした。それに倣ならって教授たちもそうした。しかし、一回か二回手を叩たたいただけでやめてしまった先生が何人かいることに、ハリーは気づいた。生徒も何人か一いっ緒しょに拍手したが、大多数は演説えんぜつが終ったことで不ふ意いを衝つかれていた。だいたい二ふた言こと三み言ことしか聞いてはいなかったのだ。ちゃんとした拍手が起こる前に、ダンブルドアがまた立ち上がった。