新入生のグループは、恥はずかしそうにグリフィンドールとハッフルパフのテーブルの間を歩いた。誰もが先頭に立たないようにしていた。本当に小さく見えた。自分がここに来たときは、絶対こんなに幼おさなくはなかった、とハリーは思った。ハリーは一年生に笑いかけた。ユーアン・アバクロンビーの隣となりのブロンドの少年の顔が強張こわばり、ユーアンを突つついて、耳元で何か囁ささやいた。ユーアン・アバクロンビーも同じように怯おびえた顔になり、恐こわ々ごわハリーを見た。ハリーの顔から、微び笑しょうが「臭しゅう液えき」のごとくゆっくり落ちていった。
「またあとで」
ハリーはロンとハーマイオニーにそう言い、一人で大広間を出て行った。途と中ちゅうで囁く声、見つめる目、指差す動きを、ハリーはできるだけ無む視しした。まっすぐ前方を見つめ、玄げん関かんホールの人波ひとなみを縫ぬって進んだ。それから大だい理り石せきの階段を急いで上り、隠れた近道をいくつか通ると、群れからずっと遠くなった。
人影ひとかげもまばらな廊下ろうかを歩きながら、こうなることを予測しなかった自分が愚おろかだった、とハリーは自分自身に腹を立てた。みんなが僕を見つめるのは当然だ。二ヵ月前に、三校対たい抗こう試じ合あいの迷路めいろの中から、ハリーは一人の生徒の亡なき骸がらを抱えて現れ、ヴォルデモート卿きょうの力が復活したのを見たと宣せん言げんしたのだ。先学期、みんなが家に帰る前には、説明する時間の余裕よゆうがなかった――あの墓場で起こった恐ろしい事件を、学校全体に詳くわしく話して聞かせる気持の余裕がたとえあったとしてもだ。
ハリーは、グリフィンドールの談だん話わ室しつに続く廊下の、一番奥に着いていた。「太った婦人レディ」の肖しょう像ぞう画がの前で足を止めたとたん、ハリーは新しい合あい言葉ことばを知らないことに初めて気づいた。
「えーと……」
ハリーは「太った婦人レディ」を見つめ、元気のない声を出した。婦人はピンクサテンのドレスの襞ひだを整えながら、厳きびしい顔でハリーを見返した。
「合言葉がなければ入れません」婦人はつんとした。
「ハリー、僕、知ってるよ」
誰かがゼイゼイ言いながらやって来た。振り向くと、ネビルが走ってくる。
「なんだと思う 僕、これだけは初めて空そらで言えるよ――」ネビルは汽車の中で見せてくれた寸詰すんづまりのサボテンを振って見せた。
「ミンビュラス ミンブルトニア」
「そうよ」「太った婦人レディ」の肖像画がドアのように二人のほうに開いた。後ろの壁かべに丸い穴が現れ、そこをハリーとネビルはよじ登った。