「シェーマスが、『例のあの人』のことで、ハリーが嘘うそついてると思ってるんだ」
ハリーが黙だまっているので、ロンが簡潔かんけつに答えた。
ハーマイオニーが自分の代わりに怒ってくれるだろうと、ハリーは期待していたが、ため息が返ってきた。
「ええ、ラベンダーもそう思ってるのよ」ハーマイオニーが憂鬱ゆううつそうに言った。
「僕が嘘つきで目立ちたがり屋の間ま抜ぬけかどうか、ラベンダーと楽しくおしゃべりしたんだろう」ハリーが大声で言った。
「違うわ」ハーマイオニーが落ち着いて言った。「ハリーのことについてはあんたのお節介せっかいな大口を閉じろって、私はそう言ってやったわ。ハリー、私たちにカリカリするのは、お願いだからやめてくれないかしら。だって、もし気づいてないなら言いますけどね、ロンも私もあなたの味方なのよ」
一いっ瞬しゅん、間まが空あいた。
「ごめん」ハリーが小さな声で言った。
「いいのよ」ハーマイオニーが威厳いげんのある声で言った。それから、ハーマイオニーは首を振った。「昨年度末の宴えん会かいで、ダンブルドアが言ったことを憶おぼえていないの」
ハリーとロンはぽかんとしてハーマイオニーを見た。ハーマイオニーはまたため息をついた。
「『例のあの人』のことで、ダンブルドアはこうおっしゃったわ。『不和と敵対てきたい感情を蔓延まんえんさせる能力に長たけておる。それと戦うには、同じくらい強い友情と信頼の絆きずなを示すしかない――』」
「君、どうしてそんなこと憶えていられるの」ロンは称しょう賛さんの眼差しでハーマイオニーを見た。
「ロン、私は聴きいてるのよ」ハーマイオニーは少しひっかかる言い方をした。
「僕だって聞いてるよ。それでも僕は、ちゃんと憶えてなくて――」
「要するに」ハーマイオニーは声を張り上げて主張を続けた。「こういうことが、ダンブルドアがおっしゃったことそのものなのよ。『例のあの人』が戻ってきてまだ二ヵ月なのに、もう私たちは仲なか間ま内うちで争いはじめている。組分け帽子ぼうしの警告けいこくも同じよ。団結だんけつせよ、内側を強くせよ――」
「だけどハリーは昨夜いみじくも言ったぜ」ロンが反論はんろんした。「スリザリンと仲良なかよくなれっていうなら――無理だね」
「寮りょう同士どうしの団結にもう少し努力しないのは残念だわ」ハーマイオニーが辛辣しんらつに言った。