「課題かだいをなんとか読むことができた者は、自分の作った薬のサンプルを細ほそ口くち瓶びんに入れ、名前をはっきり書いたラベルを貼はり、我わが輩はいがテストできるよう、教きょう壇だんの机に提出したまえ」スネイプが言った。「宿題。羊よう皮ひ紙し三十センチに、月長石の特性と、魔法薬調合に関するその用途ようとを述べよ。木曜に提出」
みんなが細ほそ口くち瓶びんを詰つめているとき、ハリーは煮にえくり返る思いで片かたづけをしていた。僕の薬は、腐くさった卵たまごのような臭しゅう気きを発しているロンのといい勝負だ。ネビルのだって、混合こんごうしたてのセメントぐらいに固くて、ネビルが鍋底なべぞこから刮こそげ落としているじゃないか。それなのに、今日の課題かだいで零点れいてんをつけられるのはハリーだけだ。ハリーは杖つえをカバンにしまい、椅子にドサッと腰掛こしかけて、みんながスネイプの机にコルク栓せんをした瓶びんを提出しに行くのを眺ながめていた。やっと終業のベルが鳴り、ハリーは真っ先に地ち下か牢ろうを出た。ロンとハーマイオニーが追いついたときには、もう大広間で昼食を食べはじめていた。天井は今朝よりもどんよりとした灰色に変わっていた。雨が高窓たかまどを打っている。
「ほんとに不公平だわ」ハリーの隣となりに座り、シェパード・パイをよそいながら、ハーマイオニーが慰なぐさめた。「あなたの魔法薬はゴイルのほどひどくなかったのに。ゴイルが自分のを瓶に詰めたとたんに、全部割れちゃって、ローブに火がついたわ」
「うん、でも」ハリーは自分の皿を睨にらみつけた。「スネイプが僕に公平だったことなんかあるか」
二人とも答えなかった。三人とも、スネイプとハリーの間の敵意てきいが、ハリーがホグワーツに一歩踏ふみ入れたときから絶ぜっ対たい的てきなものだったと知っていた。