「さて、みなさん、この学科のこれまでの授業は、かなり乱れてバラバラでしたね。そうでしょう」アンブリッジ先生は両手を体の前できちんと組み、正面を向いた。「先生がしょっちゅう変わって、しかも、その先生方の多くが魔ま法ほう省しょう指し導どう要よう領りょうに従っていなかったようです。その不幸な結果として、みなさんは、魔法省がふくろう学年に期待するレベルを遥はるかに下回っています」
「しかし、ご安心なさい。こうした問題がこれからは是正ぜせいされます。今年は、慎しん重ちょうに構築こうちくされた理論中心の魔法省指導要領どおりの防衛術を学んでまいります。これを書き写してください」
先生はまた黒板を叩いた。最初の文字が消え、「授業の目的」という文章が現れた。
防衛術の基き礎そとなる原理を理解すること
防衛術が合ごう法ほう的てきに行使される状況認識にんしきを学習すること
防衛術の行使を、実じっ践せん的てきな枠わく組ぐみに当てはめること
数分間、教室は羊皮紙に羽根ペンを走らせる音で一いっ杯ぱいになった。全員がアンブリッジ先生の三つの目的を写し終えると、先生が聞いた。「みなさん、ウィルバート・スリンクハードの『防衛術の理論』を持っていますか」
持っていますと言うボソボソ声が、教室中から聞こえた。
「もう一度やりましょうね」アンブリッジ先生が言った。「わたくしが質問したら、お答えはこうですよ。『はい、アンブリッジ先生』または、『いいえ、アンブリッジ先生』。では、みなさん、ウィルバート・スリンクハードの『防ぼう衛えい術じゅつの理論りろん』を持っていますか」
「はい、アンブリッジ先生」教室中がわーんと鳴った。
「よろしい」アンブリッジ先生が言った。「では、五ページを開いてください。『第一章、初しょ心しん者しゃの基き礎そ』。おしゃべりはしないこと」