ハリーとハーマイオニーがすぐに手を挙げた。アンブリッジ先生のぼってりした目が一いっ瞬しゅんハリーに止まったが、そのあとハーマイオニーの名を呼んだ。
「はい、ミス・グレンジャー 何かほかに聞きたいの」
「はい」ハーマイオニーが答えた。「『闇やみの魔ま術じゅつに対する防衛術じゅつ』の真の狙ねらいは、間違いなく、防衛呪文の練習をすることではありませんか」
「ミス・グレンジャー、あなたは、魔法省の訓練を受けた教育専せん門もん家かですか」アンブリッジ先生はやさしい作り声で聞いた。
「いいえ、でも――」
「さあ、それなら、残念ながら、あなたには、授業の『真の狙い』を決める資格しかくはありませんね。あなたよりもっと年上の、もっと賢かしこい魔法使いたちが、新しい指し導どう要よう領りょうを決めたのです。あなた方が防衛呪文について学ぶのは、安全で危険のない方法で――」
「そんなの、何の役に立つ」ハリーが大声を上げた。「もし僕たちが襲われるとしたら、そんな方法――」
「挙手きょしゅ、ミスター・ポッター」アンブリッジ先生が歌うように言った。
ハリーは拳こぶしを宙に突つき上げた。アンブリッジ先生は、またそっぽを向いた。しかし、こんどはほかの何人かの手も挙がった。
「あなたのお名前は」アンブリッジ先生がディーンに聞いた。
「ディーン・トーマス」
「それで ミスター・トーマス」
「ええと、ハリーの言うとおりでしょう」ディーンが言った。「もし僕たちが襲われるとしたら、危険のない方法なんかじゃない」
「もう一度言いましょう」アンブリッジ先生は、人をイライラさせるような笑顔をディーンに向けた。「このクラスで襲おそわれると思うのですか」
「いいえ、でも――」
アンブリッジ先生はディーンの言葉を押さえ込むように言った。「この学校のやり方を批判ひはんしたくはありませんが」先生の大口に、曖昧あいまいな笑いが浮かんだ。「しかし、あなた方は、これまで、たいへん無責任な魔法使いたちに曝さらされてきました。非常に無責任な――言うまでもなく」先生は意地悪くフフッと笑った。「非常に危険な半はん獣じゅうもいました」
「ルーピン先生のことを言ってるなら」ディーンの声が怒っていた。「いままでで最高の先生だった――」
「挙手きょしゅ、ミスター・トーマス いま言いかけていたように――みなさんは、年齢ねんれいにふさわしくない複雑ふくざつで不ふ適てき切せつな呪じゅ文もんを――しかも命取りになりかねない呪文を――教えられてきました。恐きょう怖ふに駆かられ、一日おきに闇やみの襲しゅう撃げきを受けるのではないかと信じ込むようになったのです――」
「そんなことはありません」ハーマイオニーが言った。「私たちはただ――」
「手が挙あがっていません、ミス・グレンジャー」
ハーマイオニーが手を挙げた。アンブリッジ先生がそっぽを向いた。