ロンが息を呑のんだ。ラベンダー・ブラウンはキャッと悲鳴ひめいを上げ、ネビルは椅子から横にずり落ちた。しかし、アンブリッジ先生はぎくりともしない。気味の悪い満足げな表情を浮かべて、ハリーをじっと見つめていた。
「グリフィンドール、十点減点げんてんです。ミスター・ポッター」
教室中がしんとして動かなかった。みんながアンブリッジ先生かハリーを見ていた。
「さて、いくつかはっきりさせておきましょう」
アンブリッジ先生が立ち上がり、ずんぐりした指を広げて机の上につき、身を乗り出した。
「みなさんは、ある闇やみの魔法使いが戻ってきたという話を聞かされてきました。死から蘇よみがえったと――」
「あいつは死んでいなかった」ハリーが怒った。「だけど、ああ、蘇ったんだ」
「ミスター・ポッターあなたはもう自分の寮りょうに十点失わせたのにこれ以上自分の立場を悪くしないよう」アンブリッジ先生は、ハリーを見ずにこれだけの言葉を一気に言った。「いま言いかけていたように、みなさんは、ある闇の魔法使いが再び野やに放はなたれたという話を聞かされてきました。これは嘘うそです」
「嘘じゃない」ハリーが言った。「僕は見た。僕はあいつと戦ったんだ」
「罰則ばっそくです。ミスター・ポッター」アンブリッジ先生が勝ち誇ほこったように言った。
「明日の夕方。五時。わたくしの部屋で。もう一度言いましょう。これは嘘です。魔法省は、みなさんに闇の魔法使いの危険はないと保ほ証しょうします。まだ心配なら、授業時間外に、遠えん慮りょなくわたくしに話をしにきてください。闇の魔法使い復活など、たわいのない嘘でみなさんを脅おびやかす者がいたら、わたくしに知らせてください。わたくしはみなさんを助けるためにいるのです。みなさんのお友達です。さて、ではどうぞ読み続けてください。五ページ、『初しょ心しん者しゃの基き礎そ』」