三人は隅すみのほうにカバンを取りに行き、また暖炉近くの椅子に戻った。他の生徒も夕食から戻りはじめていた。ハリーは肖像画の穴から顔を背そむけていたが、それでもみんながじろじろ見る視線しせんを感じていた。
「最初にスネイプのをやるか」ロンが羽は根ねペンをインクに浸ひたした。「月げっ長ちょう石せきの……特性と……魔ま法ほう薬やく調ちょう合ごうに関する……その用途ようと」ロンはブツブツ言いながら、羊よう皮ひ紙しの一番上にその言葉を書いた。「そーら」ロンは題に下線かせんを引くと、ハーマイオニーの顔を期待を込めて見上げた。
「それで、月げっ長ちょう石せきの特性と、魔ま法ほう薬やく調ちょう合ごうに関するその用途ようとは」
しかし、ハーマイオニーは聞いていなかった。眉まゆをひそめて部屋の一番奥の隅すみを見ていた。そこには、フレッド、ジョージ、リー・ジョーダンが、無む邪じゃ気きな顔の一年生のグループの真ん中に座っていた。一年生はみんな、フレッドが持っている大きな紙袋から出した何かを噛かんでいるところだった。
「だめ。残念だけど、あの人たち、やりすぎだわ」ハーマイオニーが立ち上がった。完全に怒っている。「さあ、ロン」
「僕――なに」ロンは明らかに時間稼かせぎをしている。「だめだよ――あのさぁ、ハーマイオニー――お菓か子しを配ってるからって、あいつらを叱しかるわけにはいかない」
「わかってるくせに。あれは『鼻血はなぢヌルヌル・ヌガー』か――それとも『ゲーゲー・トローチ』か――」
「『気絶きぜつキャンディ』」ハリーがそっと言った。
一人また一人と、まるで見えないハンマーで頭を殴なぐられたように、一年生が椅子に座ったままコトリと気を失った。床に滑すべり落ちた者もいたし、舌をだらりと出して椅子の肘掛ひじかけにもたれるだけの者もいた。見物人の大多数は笑っていたが、ハーマイオニーは肩を怒いからせ、フレッドとジョージのほうにまっすぐ行進していった。二人はメモ用のクリップボードを手に、気を失った一年生を綿密めんみつに観察かんさつしていた。ロンは椅子から半分立ち上がり、中ちゅう腰ごしのままちょっと迷って、それからハリーにゴニョゴニョと言った。「ハーマイオニーがちゃんとやってる」そして、ひょろ長い体を可能なかぎり縮ちぢめて椅子に身を沈めた。