その日は冷たく風も出てきていた。禁じられた森の端はたにあるハグリッドの小屋まで、下り坂の芝生しばふを歩いていると、ときどき雨がパラパラと顔に当たった。グラブリー‐プランク先生はハグリッドの小屋の戸口から十メートル足らずのところで生徒を待っていた。先生の前には小枝がたくさん載のった長い架台かだいが置かれている。ハリーとロンが先生のそばに行くと、後ろから大笑いする声が聞こえた。振り向くと、ドラコ・マルフォイが、いつものスリザリンの腰こし巾ぎん着ちゃくに囲まれて、大股おおまたで近づいてくるのが見えた。たったいまマルフォイが何かおもしろおかしいことを言ったのは明らかだ。クラッブ、ゴイル、パンジー・パーキンソン、その他の取り巻き連中は、架台かだいの周りに集まったときもまだ思いっ切りニヤニヤ笑いを続けていた。みんながハリーのほうを見てばかりいるので、冗じょう談だんの内容が何だったのか、苦もなく推測すいそくできる。
「みんな集まったかね」
スリザリンとグリフィンドールの全員が揃そろうと、グラブリー‐プランク先生が大声で言った。
「早速さっそく始めようかね。ここにあるのが何だか、名前がわかる者はいるかい」
先生は目の前に積み上げた小枝を指した。ハーマイオニーの手がパッと挙あがった。その背後でマルフォイがハーマイオニーのまねをして、歯を出っ歯にし、答えたくてしかたがないようにピョンピョン飛び上がっている。パンジー・パーキンソンがキャーキャー笑ったが、それがほとんどすぐに悲鳴ひめいに変わった。架台の小枝が宙に跳はねて、ちょうど木でできた小さなピクシー妖よう精せいのような正体を現したからだ。節ふしの目立つ茶色の腕や脚あし、両手の先に二本の小枝のような指、樹皮じゅひのようなのっぺりした奇き妙みょうな顔にはコガネムシのようなこげ茶色の目が二つ光っている。
「おぉぉぉぉぅ」
パーバティとラベンダーの声が、ハリーを完全にイライラさせた。まるでハグリッドが、生徒の感心する生物を見せた例ためしがないとでも言うような反応はんのうだ。たしかに、「レタス食い虫フロバーワーム」はちょっとつまらなかったが、「火とかげサラマンダー」や「ヒッポグリフ」は十分おもしろかったし、「尻しっ尾ぽ爆ばく発はつスクリュート」は、もしかしたらおもしろすぎた。