「アイタッ」
ハリーが強く握にぎりすぎて、ボウトラックルをほとんど折おってしまいそうになり、反撃はんげきに出たボウトラックルが鋭するどい指でハリーの手を襲おそい、手に長い深い切り傷きずを二本残した。ハリーはボウトラックルを取り落とした。クラッブとゴイルは、ハグリッドがクビになるという話にバカ笑いしていたが、ボウトラックルが逃げ出したのを見て、ますますバカ笑いした。動く棒切ぼうきれのようなボウトラックルは、森に向かって全速力で走り、まもなく木の根の間に飲まれるように見えなくなった。校庭の向こうから終業ベルが遠く聞こえ、ハリーは血で汚れた羊よう皮ひ紙しを丸め、ハーマイオニーのハンカチで手を縛しばって、「薬やく草そう学がく」のクラスに向かった。マルフォイの嘲あざけり笑いが、まだ耳に残っていた。
「マルフォイのやつ、ハグリッドをもう一回ウスノロって呼んでみろ……」ハリーが唸うなった。
「ハリー、マルフォイといざこざを起こしてはだめよ。あいつがいまは監かん督とく生せいだってこと、忘れないで。あなたをもっと苦しい目に遭あわせることだってできるんだから……」
「へーえ、苦しい目に遭うって、いったいどんな感じなんだろうね」ハリーが皮肉ひにくたっぷりに言った。ロンが笑ったが、ハーマイオニーは顔をしかめた。三人は重い足取りで野菜畑を横切った。空は降ふろうか照ろうかまだ決めかねているようだった。
「僕、ハグリッドに早く帰ってきてほしい。それだけさ」温室に着いたとき、ハリーが小さい声で言った。「それから、グラブリー‐プランクばあさんのほうがいい先生だなんて、言うな」ハリーは脅おどすようにつけ加えた。
「そんなこと言うつもりなかったわ」ハーマイオニーが静かに言った。
「あの先生は絶対に、ハグリッドには敵かなわないんだから」きっぱりとそう言ったものの、ハリーはいましがた「魔ま法ほう生せい物ぶつ飼し育いく学がく」の模も範はん的てきな授業を受けたことが十分にわかっていたし、それが気になってしかたがなかった。