ロンが呻うめいた。そして、なぜか天井をちらりと見た。
「その上、雨が降ふりそうだな」
「それが宿題と関係があるの」ハーマイオニーが眉まゆを吊つり上げた。
「ない」ロンはすぐに答えたが、耳が赤くなった。
五時五分前、ハリーは二人に「さよなら」を言い、四階のアンブリッジの部屋に出かけた。ドアをノックすると、甘ったるい声がした。「お入りなさいな」ハリーは用心して周りを見ながら入った。
三人の前ぜん任にん者しゃのときのこの部屋は知っていた。ギルデロイ・ロックハートがここにいたときは、にっこり笑いかける自分の写真がべたべた貼はってあった。ルーピンが使っていたときは、ここを訪たずねると、檻おりや水槽すいそうに入ったおもしろい闇やみの生物と出会える可能性があった。ムーディの偽者にせものの時代は、怪しい動きや隠れたものを探り検知けんちする、いろいろな道具や計けい器き類るいが詰つまっていた。
しかし、いまは、見分けがつかないほどの変わりようだった。壁かべや机はゆったり襞ひだを取ったレースのカバーや布で覆おおわれている。ドライフラワーをたっぷり生いけた花瓶かびんが数個、その下にはそれぞれかわいい花瓶敷しき、一方いっぽうの壁には飾かざり皿のコレクションで、首にいろいろなリボンを結んだ子猫の絵が、一枚一枚大きく色鮮いろあざやかに描いてある。あまりの悪あく趣しゅ味みに、ハリーは見つめたまま立ちすくんだ。するとまたアンブリッジ先生の声がした。
「こんばんは、ミスター・ポッター」
ハリーは驚おどろいてあたりを見回した。最初に気づかなかったのも当然だ。アンブリッジは花柄はながらべったりのローブを着て、それがすっかり溶とけ込こむテーブルクロスを掛かけた机の前にいた。「こんばんは、アンブリッジ先生」ハリーは突っ張った挨あい拶さつをした。
「さあ、お座んなさい」アンブリッジはレースの掛かった小さなテーブルを指差した。そのそばに、背もたれのまっすぐな椅子が引き寄せられ、机にはハリーのためと思われる羊よう皮ひ紙しが一枚用意されていた。