二回目の罰則も一回目に劣おとらずひどかった。手の甲こうの皮ひ膚ふが、昨日より早くから痛み出し、すぐに赤く腫はれ上がった。傷きずがたちまち治る状じょう態たいも、そう長くは続かないだろう。まもなく傷は刻きざみ込まれたままになり、アンブリッジはたぶん満足するだろう。しかしハリーは、痛いという声を漏もらさなかった。部屋に入ってから許されるまで――また真夜中過ぎだったが――「こんばんは」と「おやすみなさい」しか言わなかった。
しかし、宿題のほうはもはや絶ぜつ望ぼう的てきだった。グリフィンドールの談だん話わ室しつに戻ったとき、ハリーはぐったり疲れていたが、寝室しんしつには行かず、本を開いてスネイプの月げっ長ちょう石せきのレポートに取りかかった。終ったときはもう二時半だった。いい出来でないことはわかっていた。しかし、どうしようもない。何か提出しなければ、次はスネイプの罰則を食らうだろう。それから大だい至し急きゅう、マクゴナガル先生の出題に答えを書き、ボウトラックルの適切てきせつな扱あつかい方についてグラブリー‐プランク先生の宿題を急きゅう拵ごしらえし、よろよろとベッドに向かった。服を着たまま、ベッドカバーの上で、ハリーはあっという間に眠りに落ちた。
木曜は疲れてぼーっとしているうちに過ぎた。ロンも眠そうだったが、どうしてそうなのか、ハリーには見当がつかなかった。三日目の罰則ばっそくも、前の二日間と同じように過ぎた。ただ、二時間が過ぎたころ、「僕は嘘うそをついてはいけない」の文字が手の甲こうから消えなくなり、刻きざみつけられたまま血が滲にじみ出してきた。先の尖とがった羽は根ねペンのカリカリという音が止まったので、アンブリッジ先生が目を上げた。
「ああ」自分の机から出てきて、ハリーの手を自みずから調べ、アンブリッジがやさしげに言った。
「これで、あなたはいつも思い出すでしょう。ね 今夜は帰ってよろしい」
「明日も来なければいけませんか」ハリーはズキズキする右手ではなく、左手でカバンを取り上げた。
「ええ、そうよ」アンブリッジ先生はいつもの大口でにっこりした。「ええ、もう一晩ひとばんやれば、言葉の意味がもう少し深く刻まれると思いますよ」