「それ、すばらしいよ 君がチームに入ったら、ほんとにグーだ 君がキーパーをやるのを見たことないけど、上う手まいのか」
「下へ手たじゃない」ロンはハリーの反応はんのうで心からほっとしたようだった。「チャーリー、フレッド、ジョージが休み中にトレーニングするときは、僕がいつもキーパーをやらされた」
「それじゃ、今夜は練習してたのか」
「火曜日から毎晩まいばん……独ひとりでだけど。クアッフルが僕のほうに飛んでくるように魔法をかけたんだ。だけど、簡単じゃなかったし、それがどのぐらい役に立つのかわかんないし」ロンは神経しんけいが昂たかぶって、不安そうだった。「フレッドもジョージも、僕が選抜せんばつに現れたらバカ笑いするだろうな。僕が監かん督とく生せいになってからずっとからかいっぱなしなんだから」
「僕も行けたらいいんだけど」二人で談だん話わ室しつに向かいながら、ハリーは苦々にがにがしく言った。
「うん、僕もそう思う――ハリー、君の手の甲こう、それ、何」
ハリーは、空あいていた右手で鼻の頭を掻かいたところだったが、手を隠そうとした。しかし、ロンがクリーンスイープを隠し損そこねたのと同じだった。
「ちょっと切ったんだ――何でもない――なんでも――」
しかし、ロンはハリーの腕をつかみ、手の甲を自分の目の高さまで持ってきた。一いっ瞬しゅん、ロンが黙だまった。ハリーの手に刻きざまれた言葉をじっと見て、それから、不快ふかいな顔をしてハリーの手を離はなした。
「あいつは書き取り罰則ばっそくをさせてるだけだって、そう言っただろ」
ハリーは迷った。しかし、結局ロンが正直に打ち明けたのだからと、アンブリッジの部屋で過ごした何時間かが本当は何だったのかを、ロンに話した。
「あの鬼婆ばばぁ」「太った婦人レディ」の前で立ち止まったとき、ロンはむかついたように小声で言った。「太った婦人レディ」は額縁がくぶちにもたれて安らかに眠っている。「あの女、病気だ マクゴナガルのところへ行けよ。何とか言ってこい」
「いやだ」ハリーが即座そくざに言った。「僕を降参こうさんさせたなんて、あの女が満足するのはまっぴらだ」
「降参 こんなことされて、あいつをこのまま放ほうっておくのか」
「マクゴナガルが、あの女をどのくらい抑おさえられるかわからない」ハリーが言った。
「じゃ、ダンブルドアだ。ダンブルドアに言えよ」
「いやだ」ハリーはにべもなく言った。
「どうして」
「ダンブルドアは頭が一いっ杯ぱいだ」そうは言ったが、それが本当の理由ではなかった。ダンブルドアが六月から一度もハリーと口をきかないのに、助けを求めにいくつもりはなかった。
「うーん、僕が思うに、君がするべきことは――」ロンが言いかけたが、「太った婦人レディ」に遮さえぎられた。婦人レディは眠そうに二人を見ていたが、ついに爆発ばくはつした。「合あい言葉ことばを言うつもりなの それともあなたたちの会話が終るのを、ここで一ひと晩ばん中じゅう起きて待たなきゃいけないの」