金曜の夜明けもそれまでの一週間のようにぐずぐずと湿っぽかった。ハリーは大広間に入ると自然に教きょう職しょく員いんテーブルを見るようになっていたが、ハグリッドの姿を見つけられるだろうと本気で思っていたわけではない。ハリーの気持はすぐにもっと緊きん急きゅうな問題のほうに向いていた。まだやっていない山のような宿題、アンブリッジの罰則ばっそくがまだもう一回あるということなどだ。
その日一日ハリーを持ちこたえさせたのは、一つにはとにかくもう週末だということだった。それに、アンブリッジの罰則最終日はたしかにおぞましかったが、部屋の窓から遠くにクィディッチ競技場が見える。うまくいけば、ロンの選抜せんばつの様子が少し見えるかもしれない。たしかに、ほんの微かすかな光こう明みょうかもしれない。しかし、いまのこの暗さを少しでも明るくしてくれるものなら、ハリーにはありがたかった。この週は、ホグワーツに入学以来最悪の第一週目だった。
夕方五時に、これが最後になることを心から願いながら、ハリーはアンブリッジ先生の部屋のドアをノックし、「お入り」と言われて中に入った。羊よう皮ひ紙しがレースカバーの掛かかった机でハリーを待っていた。先の尖とがった黒い羽は根ねペンがその横にあった。
「やることはわかってますね、ミスター・ポッター」アンブリッジはハリーにやさしげに笑いかけながら言った。
ハリーは羽根ペンを取り上げ、窓からちらりと外を見た。もう三センチ右に椅子をずらせば……机にもっと近づくという口実で、ハリーはなんとかうまくやった。こんどは見える。遠くでグリフィンドール・クィディッチ・チームが、競技場の上を上がったり下がったりしている。六、七人の黒い影が、三本の高いゴールポストの下にいる。キーパーの順番が来るのを待っているらしい。これだけ遠いと、どれがロンなのか見分けるのは無理だった。