スナッフルズさん
お元気ですか。ここに戻ってからの最初の一週間はひどかった。週末になって本当にうれしいです。
「闇やみの魔ま術じゅつの防ぼう衛えい術じゅつ」に、新任しんにんのアンブリッジ先生が来ました。あなたのお母さんと同じくらい素敵すてきな人です。去年の夏にあなたに書いた手紙と同じ件で手紙を書いています。昨夜アンブリッジ先生の罰則ばっそくを受けていたときに、また起こりました。
僕たちの大きな友達がいないので、みんな寂さびしがっています。早く帰ってきてほしいです。
なるべく早くお返事をください。
お元気で。
ハリーより
ハリーは第三者の目で手紙を数回読み返した。これなら何のことを話しているのか、誰に向かって話しているのかも、この手紙を読んだだけではわからないだろう。シリウスにハグリッドのヒントが通じて、ハグリッドがいつ帰ってくるのかを教えてくれればいいが、とハリーは願った。まともには聞けない。ハグリッドがホグワーツを留守にして、いったい何をしようとしているのかに、注意を引きすぎてしまうかもしれないからだ。
こんなに短い手紙なのに、書くのにずいぶん時間がかかった。書いている間に、太陽の光が、部屋の中ほどまで忍び込んでいた。みんなが起き出す物音が、上の寝室しんしつから遠く聞こえた。羊よう皮ひ紙しにしっかり封をして、ハリーは肖しょう像ぞう画がの穴をくぐり、ふくろう小屋に向かった。
「私ならそちらの道は行きませんね」ハリーが廊下ろうかを歩いていると、すぐ目の前の壁かべから「ほとんど首無しニック」がふわふわ出てきて、ハリーをドキッとさせた。「廊下の中ほどにあるパラセルススの胸きょう像ぞうの脇わきを次に通る人に、ピーブズが愉快ゆかいな冗じょう談だんを仕し掛かけるつもりです」
「それ、パラセルススが頭の上に落ちてくることもあり」ハリーが聞いた。
「そんなバカなとお思いでしょうが、あります」「ほとんど首無しニック」がうんざりした声で言った。「ピーブズには繊細せんさいさなどという徳目とくもくはありませんからね。私は『血みどろ男だん爵しゃく』を探しに参まいります……男爵なら止めることができるかもしれません……ではご機嫌きげんよう、ハリー……」
「ああ、じゃあね」
ハリーは右に曲がらずに左に折れ、ふくろう小屋へは遠回りでも、より安全な道を取った。窓を一つ通り過ぎるたびに、ハリーは気力が高まってきた。どの窓からも真まっ青さおな明るい空が見える。あとでクィディッチの練習がある。ハリーはやっとクィディッチ競技場に戻れるのだ。