「こっちにはこっちの伝つ手てがあるんだ」フィルチは得意げに凄すごんだ。「さあ、なんでもいいから送るものをこっちへよこせ」
「できないよ。もう出してしまったもの」手紙を送るのにぐずぐずしなくてよかったと、ハリーは何かに感謝かんしゃしたい気持だった。
「出してしまった」フィルチの顔が怒りで歪ゆがんだ。
「出してしまったよ」ハリーは落ち着いて言った。
フィルチは怒って口を開け、二、三秒パクパクやっていたが、それからハリーのローブを舐なめるようにジローッと見た。
「ポケットに入ってないとどうして言える」
「どうしてって――」
「ハリーが出すところを、私が見たわ」チョウが怒ったように言った。
フィルチがさっとチョウを見た。
「おまえが見た――」
「そうよ。見たわ」チョウが激はげしい口調で言った。
一いっ瞬しゅん、フィルチはチョウを睨にらみつけ、チョウは睨み返した。それから背を向け、ぎごちない歩き方でドアに向かったが、ドアの取っ手に手を掛かけて立ち止まり、ハリーを振り返った。
「クソ爆弾ばくだんがプンとでも臭ったら……」
フィルチが階段をコツンコツンと下りて行き、ミセス・ノリスは、ふくろうたちをもう一度無念むねんそうに目で舐なめてからあとについて行った。
ハリーとチョウが目を見合わせた。
「ありがとう」ハリーが言った。
「どういたしまして」メンフクロウが上げっぱなしにしていた脚あしにやっと小包を括くくりつけながら、チョウが微かすかに頬ほおを染めた。「クソ爆弾を注文してはいないでしょう」
「してない」ハリーが答えた。
「だったら、フィルチはどうしてそうだと思ったのかしら」
チョウはふくろうを窓際まどぎわに運びながら言った。
ハリーは肩をすくめた。チョウばかりでなくハリーにとっても、それはまったく謎なぞだった。しかし、不ふ思し議ぎなことに、いまはそんなことはどうでもよい気分だった。
二人は一いっ緒しょにふくろう小屋を出た。城の西塔にしとうに続く廊下ろうかの入口で、チョウが言った。
「私はこっちなの。じゃ、あの……またね、ハリー」
「うん……また」