チョウはハリーににっこりして歩き出した。ハリーもそのまま歩き続けた。気持が静かに昂たかぶっていた。ついにチョウとまとまった会話をやってのけた。しかも一度もきまりの悪い思いをせずに……あの先生にあんなふうに立ち向かうなんて、あなたはとっても勇敢ゆうかんだったわ……チョウがハリーを勇敢だと言った……ハリーが生きていることを憎にくんではいない……。
もちろん、チョウはセドリックのほうが好きだった。それはわかっている……ただ、もし僕があのパーティでセドリックより先に申し込んでいたら、事じ情じょうは違っていたかもしれない……僕が申し込んだとき、チョウは断ことわるのが本当に申し訳ないという様子だった……。
「おはよう」大広間のグリフィンドールのテーブルで、ハリーはロンとハーマイオニーのところに座りながら、明るく挨あい拶さつした。
「なんでそんなにうれしそうなんだ」ロンが驚おどろいてハリーを見た。
「う、うん……あとでクィディッチが」ハリーは幸せそうに答え、ベーコンエッグの大皿を引き寄せた。
「ああ……うん……」ロンは食べかけのトーストを下に置き、かぼちゃジュースをがぶりと飲み、それから口を開いた。「ねえ……僕と一いっ緒しょに、少し早めに行ってくれないか ちょっと――えー――僕に、トレーニング前の練習をさせてほしいんだ。そしたら、ほら、ちょっと勘かんがつかめるし」
「ああ、オッケー」ハリーが言った。
「ねえ、そんなことだめよ」ハーマイオニーが真剣しんけんな顔をした。「二人とも宿題がほんとに遅れてるじゃない――」
しかし、ハーマイオニーの言葉がそこで途と切ぎれた。朝の郵便ゆうびんが到とう着ちゃくし、いつものようにコノハズクが「日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん」をくわえてハーマイオニーのほうに飛んできて、砂さ糖とう壷つぼすれすれに着地した。コノハズクが片脚かたあしを突き出し、ハーマイオニーはその革かわの巾きん着ちゃくに一クヌートを押し込んで新聞を受け取った。コノハズクが飛び立ったときには、ハーマイオニーは新聞の一面にしっかりと目を走らせていた。
「何かおもしろい記事、ある」ロンが言った。ハリーはニヤッとした。宿題の話題を逸そらせようとロンが躍起やっきになっているのがわかるのだ。
「ないわ」ハーマイオニーがため息をついた。「『妖女ようじょシスターズ』のベース奏者そうしゃが結婚するゴシップ記事だけよ」