ハーマイオニーは新聞を広げてその陰かげに埋もれてしまった。ハリーはもう一度ベーコンエッグを取り分け、食べることに専念せんねんした。ロンは、何か気になってしょうがないという顔で高窓たかまどを見つめていた。
「ちょっと待って」ハーマイオニーが突然声を上げた。「ああ、だめ……シリウス」
「何かあったの」ハリーが新聞をぐいっと乱暴に引っ張ったので、新聞は半分に裂さけ、ハリーの手に半分、ハーマイオニーの手にもう半分残った。
「『魔ま法ほう省しょうは信頼できる筋すじからの情報を入手した。シリウス・ブラック、悪名高い大たい量りょう殺さつ人じん鬼きであり……云々うんぬん、云々……は現在ロンドンに隠れている』」ハーマイオニーは心配そうに声をひそめて、自分の持っている半分を読んだ。
「ルシウス・マルフォイ、絶対そうだ」ハリーも低い声で、怒り狂った。「プラットホームでシリウスを見破ったんだ……」
「えっ」ロンが驚いて声を上げた。「君、まさか――」
「シーッ」ハリーとハーマイオニーが抑おさえた。
「……『魔法省は、魔法界に警けい戒かいを呼びかけている。ブラックは非常に危険で……十三人も殺し……アズカバンを脱獄だつごく……』いつものくだらないやつだわ」ハーマイオニーは新聞の片かたわれを下に置き、怯おびえたような目でハリーとロンを見た。「つまり、シリウスはもう二度とあの家を離はなれちゃいけない。そういうことよ」ハーマイオニーがヒソヒソ言った。「ダンブルドアはちゃんとシリウスに警告けいこくしてたわ」
ハリーは塞ふさぎ込こんで、破り取った新聞の片割れを見下ろした。ページの大部分は広告で、「マダム・マルキンの洋よう装そう店てん――普段着から式服しきふくまで」がセールをやっているらしい。
「えーっ これ見てよ」ハリーはロンとハーマイオニーが見えるように、新聞を平らに広げて置いた。
「僕、ローブは間に合ってるよ」ロンが言った。
「違うよ」ハリーが言った。「見て……この小さい記事……」
ロンとハーマイオニーが新聞に覆おおいかぶさるようにして読んだ。六行足らずの短い記事で、一番下の欄らんに載のっている。
魔ま法ほう省しょう侵しん入にゅう事じ件けん
ロンドン市クラッパム地区ラバーナム・ガーデン二番地に住むスタージス・ポドモア38は八月三十一日魔法省に侵しん入にゅう並びに強ごう盗とう未み遂すい容よう疑ぎでウィゼンガモットに出しゅっ廷ていした。ポドモアは、午前一時に最高機き密みつの部屋に押し入ろうとしているところを、ガード魔マンのエリック・マンチに捕つかまった。ポドモアは弁明べんめいを拒こばみ、両りょう容疑ようぎについて有罪ゆうざいとされ、アズカバンに六ヵ月収しゅう監かんの刑けいを言い渡された。