ハーマイオニーは、何か考え込みながら、手にした新聞の片かたわれを折りたたんだ。ハリーがナイフとフォークを置いたとき、ハーマイオニーはふと我に返ったように言った。
「さあ、それじゃ、スプラウト先生の『自然に施せ肥ひする灌木かんぼく』のレポートから始めましょうか。うまくいけば、昼食前に、マクゴナガルの『無む生せい物ぶつ出しゅつ現げん呪じゅ文もん』に取りかかれるかもしれない……」
上じょう階かいの寮りょうで待ち受けている宿題の山を思うと、ハリーは良心が疼うずいた。しかし、空は晴れ渡り、わくわくするような青さだったし、ハリーはもう一週間もファイアボルトに乗っていなかった……。
「今夜やりゃいいのさ」ハリーと連れだってクィディッチ競技場に向かう芝生しばふの斜面しゃめんを下りながら、ロンが言った。二人とも肩には箒ほうきを担かつぎ、耳には「二人ともふくろうに落ちるわよ」というハーマイオニーの警告けいこくがまだ鳴り響ひびいていた。「それに、明日あしたってものがある。ハーマイオニーは勉強となると熱くなる。あいつはそこが問題さ……」ロンはそこで一いっ瞬しゅん言葉を切った。そしてちょっと心配そうに言った。「あいつ、本気かな。ノートを写させてやらないって言ったろ」
「ああ、本気だろ」ハリーが言った。「だけど、こっちのほうも大事さ。クィディッチ・チームに残りたいなら、練習しなきゃならない……」
「うん、そうだとも」ロンは元気が出たようだった。「それに、宿題を全部やっつける時間はたっぷりあるさ……」
二人がクィディッチ競技場に近づいたとき、ハリーはちらりと右のほうを見た。禁じられた森の木々が、黒々と揺ゆれている。森からは何も飛び立ってこなかった。遠くふくろう小屋のある塔とうの付近を、ふくろうが数羽飛び回る姿が見えるほかは、空はまったく何の影もない。心配の種は余あまるほどある。空飛ぶ馬が悪さをしたわけじゃなし。ハリーはそのことを頭から押し退のけた。
更こう衣い室しつの物置からボールを取り出し、二人は練習に取りかかった。ロンが三本のゴールポストを守り、ハリーがチェイサー役でクアッフルを投げてゴールを抜こうとした。ロンはなかなか上う手まいとハリーは思った。ハリーのゴールシュートの四分の三をブロックしたし、練習時間をかけるほどロンは調子を上げた。二時間ほど練習して、二人は昼食を食べに城へ戻った――昼食の間ずっと、ハーマイオニーは、二人が無責任だとはっきり態度たいどで示した。それから本番トレーニングのため、二人はクィディッチ競技場に戻った。更こう衣い室しつに入ると、アンジェリーナ以外の選手が全員揃そろっていた。