ケイティは鼻血を出していた。下のほうで、スリザリン生が足を踏ふみ鳴らして野や次じっている。フレッドとジョージがケイティに近寄って行った。
「ほら、これ飲めよ」フレッドがポケットから何か小さな紫むらさき色いろの物を取り出して渡した。「一発で止まるぜ」
「よーし」アンジェリーナが声をかけた。「フレッド、ジョージ、バットとブラッジャーを持って。ロン、ゴールポストのところに行くんだ。ハリー、私が放はなせと言ったらスニッチを放して。もちろん、チェイサーの目もく標ひょうはロンのゴールだ」
ハリーは双子ふたごのあとに続いて、スニッチを取りに飛んだ。
「ロンのやつ、ヘマやってくれるぜ、まったく」三人でボールの入った木箱きばこのそばに着地し、ブラッジャー一個とスニッチを取り出しながら、ジョージがブツブツ言った。
「上がってるだけだよ」ハリーが言った。「今朝、僕と練習したときは大だい丈じょう夫ぶだったし」
「ああ、まあな、仕上がりが早すぎたんじゃないか」フレッドが憂鬱ゆううつそうに言った。
三人は空中に戻った。アンジェリーナの笛の合図で、ハリーはスニッチを放し、フレッドとジョージはブラッジャーを飛ばせた。その瞬しゅん間かんから、ハリーは他のチームメイトが何をしているのかほとんど気がつかなかった。ハリーの役目は、パタパタ飛ぶ小さな金のボールを捕つかまえることで、キャッチすればチーム得点とくてんが一五〇点になるが、捕まえるには相当のスピードと技が必要なのだ。ハリーはスピードを上げ、チェイサーの間を縫ぬって、出たり入ったり、回転したり曲線を描いたりした。暖かな秋の風が顔を打ち、遠くで騒いでいるスリザリン生の声は、まったく意味をなさない唸うなりにしか聞こえない。しかし、たちまちホイッスルが鳴り、ハリーはまた停止ていしした。
「ストップ――ストップ――ストップ」アンジェリーナが叫さけんだ。「ロン――真ん中のポストがガラ空あきだ」