練習での自分のヘボぶりで頭が一いっ杯ぱいだろうと、ハリーにはわかっていた。ハリー自身も、「♪グリフィンドールの負ーけ」の囃はやし言葉が耳について、なかなか振り払えなかった。
日曜は二人とも一日中談だん話わ室しつで本に埋もれていた。談話室はいったん生徒で一いっ杯ぱいになり、それから空からっぽになった。その日も晴天せいてんで、他のグリフィンドール生は校庭に出て、今年はあと数日しか味わえないだろうと思われる陽ひの光を楽しんでいた。夕方になると、ハリーは、まるで頭ず蓋がい骨こつの内側で誰かが脳みそを叩たたいているような気分だった。
「ねえ、宿題は週しゅう日じつにもう少し片かたづけとくようにしたほうがいいな」ハリーがロンに向かって呟つぶやいた。マクゴナガル先生の「無む生せい物ぶつ出しゅつ現げん呪じゅ文もん」の長いレポートをやっと終え、惨みじめな気持で、シニストラ先生の負けずに長く面倒な「木星の月の群れ」のレポートに取りかかるところだった。
「そうだな」ロンは少し充じゅう血けつした目を擦こすり、五枚目の羊よう皮ひ紙しの書き損そんじを、そばの暖炉だんろの火に投げ入れた。「ねえ……ハーマイオニーに、やり終えた宿題、ちょっと見せてくれないかって、頼んでみようか」
ハリーはちらっとハーマイオニーを見た。クルックシャンクスを膝ひざに乗せ、ジニーと楽しげにペチャクチャしゃべっている。その前で、宙に浮いた二本の編あみ棒ぼうが、形のはっきりしないしもべ妖よう精せい用ソックスを編み上げていた。
「だめだ」ハリーが言った。「見せてくれないのはわかり切ってるだろ」
二人は宿題を続けた。窓から見える空がだんだん暗くなり、談話室から少しずつ人が消えて行った。十一時半に、ハーマイオニーが欠伸あくびをしながら二人のそばにやってきた。