「もうすぐ終る」
「いや」ロンが一言で答えた。
「木星の一番大きな月はガニメデよ。カリストじゃないわ」ロンの肩越しに「天てん文もん学がく」のレポートを指差しながら、ハーマイオニーが言った。
「それに、火山があるのはイオよ」
「ありがとうよ」ロンは唸うなりながら、間違った部分をぐちゃぐちゃに消した。
「ごめんなさい。私、ただ――」
「ああ、ただ批判ひはんしにきたんだったら――」
「ロン――」
「お説せっ教きょうを聞いてる暇ひまはないんだ、いいか、ハーマイオニー。僕はもう首までどっぷり――」
「違うのよ――ほら」
ハーマイオニーは一番近くの窓を指差した。ハリーとロンが同時にそっちを見た。きちんとしたコノハズクが窓枠まどわくに止まり、部屋の中にいるロンのほうを見つめていた。
「ヘルメスじゃない」ハーマイオニーが驚おどろいたように言った。
「ひえー、ほんとだ」ロンは小声で言うと、羽は根ねペンを放ほうり出し、立ち上がった。「パーシーがなんで僕に手紙なんか」
ロンは窓際まどぎわに行って窓を開けた。ヘルメスが飛び込み、ロンのレポートの上に着地し、片脚かたあしを上げた。手紙が括くくりつけてある。ロンが手紙をはずすと、ふくろうはすぐに飛び立った。ロンが描いた木星の月、イオの上にインクの足跡あしあとがベタベタ残った。
「間違いなくパーシーの筆跡ひっせきだ」ロンは椅子に戻り、とっぷりと腰掛こしかけて巻紙まきがみの宛あて名な書がきを見つめながら言った。
ホグワーツ、グリフィンドール寮りょう、ロナルド・ウィーズリーへ
ロンは二人を見上げた。「どういうことだと思う」
「開けてみて」ハーマイオニーが待ち切れないように言った。ハリーも頷うなずいた。
ロンは巻紙を開いて読み出した。先に読み進むほど、ロンのしかめ面つらがひどくなった。読み終ると、辟易へきえきした顔で、ハリーとハーマイオニーに手紙を突つき出した。二人は両側から覗のぞき込み、顔を寄せ合って一いっ緒しょに読んだ。