と思う」ハリーが聞いた。
「ないと思うね」シリウスが言った。「アンブリッジのことは噂うわさでしか知らないが、『死し喰くい人びと』でないことは確かだ――」
「『死喰い人』並みにひどいやつだ」ハリーが暗い声で言った。
ロンもハーマイオニーもまったくそのとおりとばかり頷うなずいた。
「そうだ。しかし、世界は善人ぜんにんと『死し喰くい人びと』の二つに分かれるわけじゃない」シリウスが苦笑にがわらいした。「あの女はたしかにいやなやつだ――ルーピンがあの女のことを何と言っているか聞かせたいよ」
「ルーピンはあいつを知ってるの」ハリーがすかさず聞いた。アンブリッジが最初のクラスで危険な半はん獣じゅうという言い方をしたのを思い出していた。
「いや」シリウスが言った。「しかし、二年前に『反はん人じん狼ろう法ほう』を起草きそうしたのはあの女だ。それでルーピンは就しゅう職しょくがほとんど不可能になった」
ハリーは、最近ルーピンがますますみすぼらしくなっていることを思い出した。そしてアンブリッジが一層いっそう嫌いになった。
「狼おおかみ人にん間げんにどうして反感を持つの」ハーマイオニーが怒った。
「きっと、怖こわいのさ」シリウスはハーマイオニーの怒った様子を見て微笑ほほえんだ。「どうやらあの女は半人間を毛嫌けぎらいしている。去年は、水中人を一いち網もう打だ尽じんにして標ひょう識しきをつけようというキャンペーンもやった。水中人をしつこく追い回すなんていうのは時間とエネルギーのむだだよ。クリーチャーみたいな碌ろくでなしが平気でうろうろしているというのに」
ロンは笑ったが、ハーマイオニーは気を悪くしたようだった。
「シリウス」ハーマイオニーが詰なじるように言った。「まじめな話、あなたがもう少しクリーチャーのことで努力すれば、きっとクリーチャーは応こたえるわ。だって、あなたはクリーチャーが仕つかえる家の最後の生き残りなんですもの。それにダンブルドア校長もおっしゃったけど――」
「それで、アンブリッジの授業はどんな具合だ」シリウスが遮さえぎった。「半獣を皆殺しにする訓練でもしてるのか」
「ううん」ハーマイオニーが、クリーチャーの弁護べんごをする話の腰を折られてお冠かんむりなのを無む視しして、ハリーが答えた。「あいつは僕たちにいっさい魔法を使わせないんだ」
「つまんない教科書を読んでるだけさ」ロンが言った。