「いいか、ハグリッドのことをあまりいろいろ詮索せんさくして回るんじゃないよ」シリウスが急いでつけ加えた。「そんなことをすれば、ハグリッドがまだ戻っていないことによけいに関心を集めてしまう。ダンブルドアはそれを望んではいない。ハグリッドはタフだ。大丈夫だよ」
それでも三人の気が晴れないようだったので、シリウスが言葉を続けた。
「ところで次のホグズミード行きはどの週末かな 実は考えているんだが、駅では犬の姿でうまくいっただろう たぶんこんども――」
「ダメ」ハリーとハーマイオニーが同時に大声を上げた。
「シリウス、『日刊予言者新聞』を見なかったの」ハーマイオニーが気遣きづかわしげに言った。
「ああ、あれか」シリウスがニヤッとした。「連中はしょっちゅう、わたしがどこにいるか当てずっぽに言ってるだけで、本当はさっぱりわかっちゃ――」
「うん。だけど、こんどこそ手て掛がかりをつかんだと思う」ハリーが言った。「マルフォイが汽車の中で言ったことで考えたんだけど、あいつは犬がおじさんだったと見破ったみたいだ。シリウスおじさん、あいつの父親もホームにいたんだよ――ほら、ルシウス・マルフォイ――だから、来ないで。どんなことがあっても。マルフォイがまたおじさんを見つけたら――」
「わかった、わかった。言いたいことはよくわかった」シリウスはひどくがっかりした様子だった。「ちょっと考えただけだ。君が会いたいんじゃないかと思ってね」
「会いたいよ。でもおじさんがまたアズカバンに放ほうり込こまれるのはいやだ」ハリーが言った。
一いっ瞬しゅん沈ちん黙もくが流れた。シリウスは火の中からハリーを見た。落おち窪くぼんだ目の眉間みけんに縦皺たてじわが一本刻きざまれた。
「君はわたしが考えていたほど父親ちちおや似にではないな」しばらくしてシリウスが口を開いた。はっきりと冷ひややかな声だった。「ジェームズなら危険なことをおもしろがっただろう」
「でも――」
「さて、もう行ったほうがよさそうだ。クリーチャーが階段を下りてくる音がする」シリウスが言った。ハリーはシリウスが嘘うそをついているとはっきりわかった。「それじゃ、この次に火の中に現れることができる時間を手紙で知らせよう。いいか その危険には耐たえられるか」
ポンと小さな音がして、シリウスの首があった場所に再びちらちらと炎が上がった。